不祥事連発も安倍首相は「想定内」この在庫一掃内閣が生まれた理由

ウラには、来夏の参院選への不安が…
戸坂 弘毅

小手先の戦術では乗り切れない

それでも青木は、「そうはいっても、安倍のままでは来年の参院選は非常に苦しい。参院選前にもチャンスを見て安倍を降ろし、石破に替えることを考える必要がある。その時はよろしく頼む」と畳みかけた。

吉田は、総裁選で「正直・公正」をスローガンに掲げた石破に対し、「首相への個人攻撃と受け止められるから控えろ」とアドバイスしていた。しかし、それでも石破は安倍批判を繰り返し、石破に愛想を尽かせていた。

そのため、青木が重ねて石破支援の意向を口にすると、「石破は、総裁選では『憲法9条二項の削除』という長年の持論をほとんど言わなかった。政治家として信念がない」「そもそも派閥解消を唱えていたのに、自ら派閥を作るなんて、言うことがころころ変わる」と、堰を切ったように石破批判を展開。

結局この日は吉田にとって、長年師事してきた青木との「決裂の日」となってしまった。

 

自民党が初めて野党に転落した際、離党して小沢一郎らと行動を共にした前歴や、派閥批判といった青臭い「正論」を吐くことから、ベテランの間では嫌われてきた石破。この総裁選を経ても結局、支持拡大のきっかけを掴めなかった。仮に来夏の参院選で自民党が大敗し、「安倍退陣」となっても、総裁の座を射止めることは簡単ではない。

「吉田博美が石破支援をめぐって青木幹雄と決裂した」。この情報を耳にして、誰よりも喜んだのは安倍晋三だった。これで、参院選で少々負けても石破待望論が高まることはない。安倍はそう受け止めたのだろう。

だが、6年が経過しようとしている長期政権への飽きが強まっている上、森友・加計学園問題がくすぶり続け、閣僚のスキャンダルも相次ぐとなれば、支持率上昇は見込めない。安倍自身も、人事など小手先の戦術だけで乗り切れると心から信じているわけではないはずだ。

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あくまで自民党内の力学だけを計算した、今回の「内向きの内閣改造」が吉と出るか凶と出るか――その結果はまだ見えていない。

(戸坂弘毅 ・ジャーナリスト、文中敬称略)