不祥事連発も安倍首相は「想定内」この在庫一掃内閣が生まれた理由

ウラには、来夏の参院選への不安が…
戸坂 弘毅

「安倍が倒れたら、次は石破」はあり得るか

9月の総裁選で、安倍が石破を「完膚なきまでに叩き潰す」と強い執念を燃やしたのは、この参院選を乗り切るためでもあった。

もちろん、第一次政権での参院選惨敗の際、先陣を切って公然と「安倍降ろし」の声を上げた石破を絶対に許さないという、個人的な感情がまずあった。ただ同時に、石破が総裁選で善戦して「ポスト安倍」の有力候補として生き残れば、来年の参院選後に石破への交代論が強まる可能性があり、その芽を摘んでおきたいとの思惑もあった。

安倍がこれまで長期安定政権を維持できた大きな要因の一つは、党内に有力な「ポスト安倍候補」が不在だったことだ。確かに、以前から石破は「ポスト安倍』の有力候補と言われてはいたが、彼が自民党内でいかに嫌われているかを考えれば、安倍にとって真の脅威とは言い難かったのが実情である。

 

野党時代の2012年自民党総裁選で、党員投票で1位だった石破を決選投票の末に破った安倍は、その後の5年間、首相権限を用いて石破の力を削ぐことに余念がなかった。

今回の総裁選では、国会議員票では安倍が82%にあたる329票を集め、一方の石破はわずか73票と、自民党議員の数が現在の半分以下だった2012年総裁選時の得票(安倍との決選投票時の89票)をも大幅に下回った。規定変更で党員票の比率が高まったこともあり、石破の善戦ぶりがクローズアップされたが、冷静に結果を見れば、石破がいかに国会議員の間では不人気かが改めて浮き彫りになった総裁選だった。

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実は総裁選の直後、石破が今後も永田町で支持を広げることがいかに難しいかを示す出来事が起きていた。

内閣改造が行われた2日後の10月4日。先の総裁選で、石破派以外で唯一まとまって「石破支持」を打ち出した、参院竹下派のまとめ役でもある参院自民党幹事長の吉田博美が、副幹事長の石井準一と連れ立って、かつて「参院のドン」といわれた元自民党参院議員会長・青木幹雄を訪ねた。吉田は長年、青木を政治の師と仰ぎ、「親父」と呼んで慕ってきた関係だ。

青木は現役時代から安倍との関係がよくないうえ、自身の長男で後継者である青木一彦(参院議員)の前回選挙で石破に世話になったことなどから、吉田ら参院竹下派の面々に「石破支持」を強く求めていた。

吉田は、選挙区は長野県だが、出身は山口県ということもあり、安倍との関係は良好。本音は安倍支持だったが、青木の強い要請を受けて「親に逆らうことは出来ない」と、参院竹下派の石破支持を決めた経緯があった。

吉田はこの日、総裁選直後に青木から「石破派の議員たちと一緒に、石破を囲む勉強会を立ち上げてもらえないか」と頼まれていたことへの返事を伝えるため、青木の事務所を訪ねたのだ。

「参加したいという仲間はいませんでした。勉強会はできません」

吉田は青木の依頼をはっきりと断った。長年の青木との関係を考えれば、意を決した上での回答だったに違いない。