不祥事連発も安倍首相は「想定内」この在庫一掃内閣が生まれた理由

ウラには、来夏の参院選への不安が…
戸坂 弘毅

思い出す2007年の「参院選惨敗」

さらに、安倍の言葉の裏には、来夏の参院選を乗り切るための「計算」も透ける。

自民党は2013年の参院選で、改選議席を30以上も上回る、現行制度下最多の65議席を獲得して圧勝した。来夏の参院選は、その時に当選した議員が改選を迎える。

当時は民主党から政権を奪還した半年後と、安倍内閣に最も勢いがあった時である。森友学園・加計学園問題に加え、消費増税も控えた今の状況を考えれば、次の参院選では、大幅な議席減は避けられない。

安倍自身、厳しい選挙になることは十分に自覚している。そこで、仮に参院選で敗北した場合も、党内から退陣論が噴出しないよう、各派に恩を売ることで予め手を打ったのだ。これまで必ず2人以上を入閣させていた女性閣僚が、二階派の片山一人であることにも、今回の組閣があくまで「内向き」であったことが表れている。

ここで思い起こされるのは、第一次安倍政権時の参院選後の出来事である。

 

2007年の参院選で、安倍率いる自民党は歴史的惨敗を喫し、結党以来初めて第一党の座から転落した。だが安倍は「改革を続行する約束を果たすのが私の責任だ」として続投を宣言。代議士会や総務会で、石破茂らから相次いで退陣要求が出されてもこれを退けた。2カ月後の総辞職の原因は、あくまで体調悪化であり、参院選敗北ではなかった。

その敗北時、安倍の心の支えとなったのが、元首相・小泉純一郎から受けた「参院選は政権選択の選挙ではないから、負けても辞める必要など全くない」という言葉だった。安倍は参院選の投票日前から、「たとえ惨敗しても続投する」との意思を固めていた。

2019年夏の参院選を乗り切って11月まで続投すれば、郷里・長州の大先輩である桂太郎を抜き、通算在職日数で「憲政史上最長」の大記録を打ち立てることができる。安倍は今回も、仮に参院選で敗北しても辞めない、との決意を固めていると見るべきだろう。

2007年の安倍(Photo by gettyimages)

また安倍は首相就任以来、法律に則ってさえいれば、従来の慣例にとらわれず権力を行使することに躊躇しない姿勢を取ってきた。

大きな争点がないにもかかわらず、任期を2年以上も残して突然「衆院解散」を断行し、内閣法制局長官に過去例のない外務省出身者を登用して、憲法解釈の変更を認めさせる。一定の審議時間を経れば、野党がいくら強く抵抗しても採決を強行する国会審議の手法からも、それは見て取れる。

日本国憲法では、首相の指名選挙は衆院での議決が優越すると定められている。小泉が指摘するように、参院選は政権選択選挙ではない。1989年の参院選後に宇野宗佑が、1998年の参院選後に橋本龍太郎がそれぞれ敗北の責任を取って首相を辞任しているが、それは自民党内の大勢が「辞任やむなし」となったためであり、与党内に続投を支持する声が多ければ辞める必要はない。

第一次政権時、安倍が参院選惨敗でも続投できたのは、麻生太郎ら安倍に近い議員の多くが続投を支持し、退陣を求める声を鎮静化させたからだった。安倍は今回もその時の再現を狙って、麻生や二階らの要求通りの人事を行い、彼らに恩を売ったということだろう。

安倍周辺では、今後、問題閣僚を交代させつつ来年の通常国会終了までしのぎ、参院選直前に再び内閣改造を断行して清新かつ政策通のメンバーを揃え、支持率を上げてから参院選に臨む――とのプランも検討されている。