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不祥事連発も安倍首相は「想定内」この在庫一掃内閣が生まれた理由

ウラには、来夏の参院選への不安が…

なぜ「危ない議員」を入閣させたのか

10月2日に発足した第4次安倍改造内閣は、19人の閣僚のうち12人が初入閣である。これは第2次安倍内閣の発足以来最多で、前回の倍だ。

前回までの7度にわたる組閣で安倍は、一貫して初入閣組を最小限に抑えてきた。政権の安定性と政策の継続性を重視してきた――という解説は、確かに事実だろう。

だが実のところ、初めて入閣する議員はマスコミからカネや異性関係にまつわるスキャンダルを徹底的に詮索され、事前の「身体検査」でもカバーしきれない不祥事が出てくる可能性が高いし、経験不足から失言も出やすい。それを避けたいとの考えがまずあった。

 

初入閣議員が政権の足を引っ張ったケースは、これまでの安倍内閣でさえ、過去の公選法違反疑惑が指摘された法相の松島みどり、東日本大震災に関し「まだ東北で良かった」と語って辞任に追い込まれた復興相の今村雅弘など、決して少なくない。実力のある閣僚経験者を優先する安倍の方針は、長期政権を維持する上で正しい判断といえる。

派閥の力が強く、自民党が「派閥連合体」であった中選挙区の時代なら、こうした安倍の方針は各派の強い反発を招き、政権はたちまち立ち往生していたに違いない。だが、小選挙区制で党首=首相の力が格段に強くなったうえ、安倍政権が比較的高い内閣支持率を維持してきたことが、それを可能にしてきた。

もっとも、初入閣組の起用を制限し続ければ、当選回数を重ねても閣僚になれない議員が増え、党内の不満は溜まる一方だ。今回の改造前には、衆院当選5回以上・参院当選3回以上で一度も入閣していない「入閣待機組」と呼ばれる自民党の国会議員は、約80名にも膨れ上がっていた。

今回、安倍がこれまでの方針を転換し、初入閣組を大幅に増やしたことについて新聞各紙は「石破茂と戦った今回の総裁選で、麻生派、二階派、岸田派など各派の力に頼ったことで「論功行賞人事」を行わなければならなくなった」などと評した。

しかし外形的には、野党各党からの「滞貨一掃内閣」「閉店セール内閣」といった酷評のほうがより当たっている。入閣候補となりながら、スキャンダルの噂や軽挙妄動が心配されて漏れ続けてきた当選7・8回のベテラン議員を計7人も入閣させたのだから、財務相・麻生太郎や官房長官・菅義偉ら屋台骨は維持したといっても、「滞貨一掃内閣」の感は強い。

共同通信社が10月2、3両日に実施した世論調査では、今回の内閣改造を「評価しない」との回答は45・2%で、「評価する」の31・0%を大幅に上回り、 内閣支持率も46・5%と約1ポイント低下した。これまでの安倍内閣を含め、普通は内閣改造を行えば支持率が上昇するものだが、今回は一般の有権者からも「滞貨一掃」と受け止められた結果だろう。

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案の定、秋の臨時国会での論戦が始まる前から、当選8回の沖縄・北方担当相・宮腰光寛、同7回の復興相・渡辺博道、同7回の科学技術担当相・平井卓也ら初入閣組の政治資金などをめぐる問題が早速明らかになり、唯一の女性閣僚となった地方創生相・片山さつき(参院当選2回・衆院当選1回)には、国税庁に口利きする見返りに100万円を受け取ったとの疑惑が「週刊文春」で大々的に報じられた。

片山は経歴上「滞貨」とまでは言えないが、組閣が行われるたびに、安倍首相宛てに自らの能力をアピールする長文の手紙を送って、何度も入閣を求め続けてきた経緯がある。臨時国会は、早くも片山の疑惑を巡って紛糾している。

だが、これだけ不祥事が続いても、安倍政権内部に目立った動揺は見られない。それは一連の出来事が、安倍が想定していた範囲内の事態だからだ。

今回の組閣直後、安倍は親しい永田町関係者にこう本音を漏らしていた。

「今回は、二階(俊博・幹事長)さんをはじめ派閥領袖に恩を売るために、各派の意向を最大限受け入れて組閣した。問題が出るなんて初めから分かっているが、深刻な問題なら直ちに首を斬ればいい。

それに、首を斬って新たな閣僚を起用すれば、また恩を売れるし、問題閣僚を押し込んできた領袖は私に文句を言えなくなるからね」

上品な表現で言えば、「党内融和を重視した布陣」となるが、言い換えれば「総裁選の論功行賞をしっかり行って、主流派から不満が出ないようにすること」を第一に考えた内閣改造であり、問題が続出することなど、初めから織り込み済みだということだ。