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老いた巨人IBMは驚愕の「3・8兆巨額買収」でGAFAに勝てるか

買った会社の売上は「3000億円」

売上高の10倍以上で買った真意は…

10月28日、米国から衝撃的なニュースが飛び込んできた。「米IBMがレッドハットを340億ドルで買収することで合意した」というのだ。主要な経済メディアやIT専門メディアが一斉に大きく扱った。

10月末日時点の為替(1ドル=112.7円)で計算すると340億ドルは3.8兆円なので、東芝の2018年3月期売上高にほぼ相当する。衝撃だったのは買収額の大きさもさることながら、買収されるレッドハット社の2018年2月期売上高が、わずか28.2億ドル(約3178億円)ということだった。

IBMをヒトに喩えれば、レッドハットはアリ、と言っていい。その会社を売上高の10倍以上の高値で買収するからには、IBMにとってよほど利点があるに違いない。狙いは何なのだろうか。

 

女性CEOならではの「思い切った賭け」

発表によると、IBMはレッドハットの発行済み普通株式のすべてを、現金で1株当たり190米ドル、総企業価値約340億ドルで買収することで最終合意に達した。買収は2019年下半期までに完了し、その後、レッドハットはIBMのハイブリッドクラウドチームの独立ユニットとして存続する。

また、レッドハット最高経営責任者(CEO)兼社長のジム・ホワイトハースト(Jim Whitehurst)氏はIBMの幹部チームに参加し、IBMのCEOジニー・ロメッティ(Ginni Rometty)氏に直属するという。

IBMはかつて「コンピュータの巨人」と称され、企業の基幹業務向け大型コンピュータ(いわゆるメインフレーム)で世界シェア7割を誇った。2017年の売上高は791.4億ドル(8兆9189.6億円)で、現在も米国を代表するコンピュータメーカーであることに変わりはない。

ただ、1980年代に「オモチャ」と軽視されていたパソコンで起業したアップル(2017年売上高2,156億ドル)、マイクロソフト(同1,103億ドル)に追い越され、1990年代にスタートしたグーグル(親会社アルファベット:同1,108億ドル)、アマゾン(同1,778.6億ドル)の後塵を拝している。もはやIBMのことを、「GAFA」に伍するテック企業と考えている人は誰もいない。

一見「バクチ」にすら思えるこの巨額買収の真意は何なのか。主要なIT専門メディアの報道を総合すると、レッドハット買収は、IBMにとっては「急成長が見込まれる『ハイブリッドクラウド』の切り札」という位置づけであるらしい。

会見でIBMのロメッティCEOは「レッドハットの買収はゲームチェンジャーであり、クラウド市場のすべてを変える」とコメントしたと伝えられる。クラウドサービスで先行するアマゾン、グーグル、マイクロソフトを追撃するねらいだが、IBMの直近の現金残高は147億ドル。その2.3倍の現金を調達しなければならない。

ロメッティ氏は1981年にシステムエンジニアとしてIBMに入社、2012年に同社初の女性CEOに就任。フォーチュン誌「アメリカのビジネス界最強の女性」トップにランクされたが、就任以来6年連続で業績が下降している。また、クラウド市場ではアマゾン社のシェアは50%超、対してIBMはわずか1.9%にとどまっている(いずれもガートナー社調べ)。こうした状況に危機感を覚えたロメッティ氏が、現状打開のために「思い切った賭けに出た」と見る向きがないではない。