中国ネット民も驚いた、中国反日言論「安倍訪中で手のひら返し」

政府の方針なのかタカ派紙が急転回…
古畑 康雄 プロフィール

四面楚歌の習近平外交

長文なので詳しくは紹介できないが、主な内容は「中国外交は現在、米国、欧州、日本、インド、オーストラリアなど主要国との関係がいずれも困難な状況にあり、特に対米関係は共和党、民主党を問わず、『中国への関与政策が失敗だった』とみており、米中関係は戦略的な協力から戦略的な対抗へと変化した」こと、さらには「一帯一路」構想が様々な障害を受けていることなどを指摘。

このような事態になったのは、ここ5年来(すなわち習近平政権登場後)のイデオロギー重視の「価値観外交」路線、この核心を一言で言えば「中国が世界の秩序を再構築し、米国に代わって新たに世界を指導する国家となる」という、習近平政権の路線が原因だとしている。

栄氏は、中国外交は、(思い上がりの「価値観外交」から)鄧小平時代の「韜光養晦」(目立たぬようにして力を蓄える)に戻ることが重要だとし、苦境を脱するためにまず対日関係を改善することが、米国との関係を改善する上でも優位に立つことができ、中日関係は中国と周辺国家との関係の中でも最も重要な位置を占める、と主張している。

そして中日関係を再び正常化させることは、その場しのぎの外交的策略ではなく、鄧小平らが80年代に確立した「中日両国は子々孫々友好を続けなければならない」という長期的目標を実現することであり、そのために両国間に存在する3つの問題への総合的な解決策を求めなければならないとしている。

具体的には歴史問題、靖国神社参拝問題、釣魚島問題であり、80年代にもこれらの問題は存在したが、当時の指導者は「求同存異(小異を残して大同につく)」、つまり問題をイデオロギー化したりナショナリズムに訴えたりしなかったと指摘、今後の日中関係はまずは民間訪問を盛んにして国民感情を改善することが重要だとしている。

「現在の中日両国の指導者は、政治的な知恵を出してこれらの問題を解決すべきであり、もし今すぐに解決できないのなら、鄧小平が語ったように、まず『争いを棚上げし』、次の世代に解決させるべきだ。つまり、これらの問題を重荷として背負ってはならず、重荷を下ろして、身軽になって前進しなければならない」――栄氏はこのように述べている。

まさに栄氏の言う通りなのだが、問題は中国が1990年代以降、共産党政権の執政の合法性を維持するために利用してきた愛国主義、つまりナショナリズムを「淡化」(薄める、弱める)できるかだ。

 

「状況が変わればまた……」

日中関係や近代史について多くのコラムを執筆しているコラムニスト、和気猫さんは、悲観的、懐疑的見方だ。

彼女は「今回の安倍訪中の際、中国政府の(天安門での)日章旗掲揚や『環球時報』の『共存共栄』論は、手の平を返すような態度の急変だった。親日派はこの急変を歓迎するが、しかし、20年以上も継続してきた反日教育の下で、多くの中国人は、対日感情をそう簡単に変えることはないだろう。歴史問題は常に根底にある」と指摘した。

さらに「例えば、多くの中国人は、『近代に入って日本は中国を2度も侵略した』(日清戦争と日中戦争)と考えている。これは『満州事変以降中国への侵略』を認めている日本政府の公的立場とは明らかに隔たりがある。

また、戦争という過去の不幸な出来事に複雑な原因があったにもかかわらず、鄧小平の『弱くなったら叩かれる』(落后就要挨打)論で片付けられているため、多くの中国人の意識の底流には、今度国が強くなれば日本に仕返しできると考えている。米中関係が悪化している中、上層部はやむを得ず対日態度を緩和させているが、状況が変われば、官民一致で日本叩き路線に戻る可能性が非常に高いと思う。」と語っている。

まさにこのような懸念があるからこそ、栄氏が指摘するように民間交流を盛んにして中国人の対日理解、対日感情を改善する必要がある。

こうした中で、「精日(精神日本人)」と呼ばれる「日本が好きすぎる中国人」の動向が注目されている。中国当局は「精日」を売国奴呼ばわりし、親日的言論を取り締まるなどの対策を取ってきたが、「日中新時代」を受け彼らに対する対応は変わるのだろうか?

(「精日」についての筆者の論考やインタビューをまとめた本を、近く講談社から出版する予定だ。詳しくはまたご紹介したい。)

(本稿は筆者個人の見解であり、所属組織を代表するものではない。)