中国ネット民も驚いた、中国反日言論「安倍訪中で手のひら返し」

政府の方針なのかタカ派紙が急転回…
古畑 康雄 プロフィール

「安倍首相を5年間入国禁止に」が……

今回の首相訪日をめぐり、中国側が友好的な雰囲気作りのためにメディアに対日批判を禁止したとの日本メディアの報道があったが、それにしても、環球時報のあまりにも極端な変わり身は、度を越していた。

例えば環球時報の胡錫進編集長は日中が対立を続けていた2014年1月、人民網(人民日報ウェブ版)「強国論壇」のインタビューの中で、安倍首相をペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)のリストに入れ、「今後5年間中国への旅行や訪問を禁止すべき」と語っていた。環球時報も13年12月に同様の社説を発表している。

ところが上記の社説に加え、胡編集長は26日、自らの微博に「日本政府が過去40年間中国に行った政府開発援助(ODA)に感謝する」との書き込みに続き、次のように記した。

「中日はお互いに恨み合うのをやめるべきだ。日本は依然米軍の占領下にあり、日米同盟は平等な同盟ではなく、日本の主権は弱められている。日本の長年の問題は米国だ。多くの中国人はワシントンの『米国が日本の軍国主義復活を防いでいる』との説明を受け入れてきた。中国が弱国だったころは確かにそうだったが、中国は今や強国であり、日本は中国にとっての脅威ではなくなった。

中国の日本に対する心理的態度は調整する必要がある。米軍の占領に対する日本の不満を呼び起こし、日本国内のナショナリズムを、中国ではなく、米軍の占領へと徐々に向けるようにすべきだ。中国はそのような調整を行う度量と気力があり、そのような操作を実現する知恵もあるはずだ。」

 

「『精日』よりも『精日』だ」

いろいろ突っ込みどころがある発言だが、中国のネットユーザーは胡のあまりにも転身の早さに「ちょっと知りたいのだが、この世界にはカメレオンと胡錫進、一体どちらが先に現れたのだろうか」、「この発言は中国の頭の悪い人びとに向かって言っているのだろう。日本は国民によって選ばれた政府だ。胡さん、あなたは自分が日本を動かせるとでも思っているのか? 日本人があなたを知っているのか? 頭の悪い(中国の)ネット愛国者をバカにしているのでは? 今日はこれ、明日はあれと、誰かがあなたに言わせているのだろう」といった皮肉や批判が相次いだ。

ネット上の文章でも「(安倍首相をブラックリストに入れろと言っていた胡や環球時報が)安倍首相が訪問すると、日本と『共存共栄』せよと呼びかける。精日(精神日本人)よりも精日だ。精日になりたくても、誰もがなれるわけではない。一般人が精日になろうとすれば捕まってしまうが、胡のような人こそ、精日になる資格があり、どんなに精日であっても捕まることはなく、逆に称賛されるのだ」「胡錫進はなぜ安倍首相に向かって『まだ5年もたっていないのに、なぜ中国に来たのか』と叫ばないのか」といった皮肉が見られた。

中国の歴史学者、章立凡氏はラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に、「中国政府が民族主義や愛国主義を扇動したのは政治的な需要からであり、国内の矛盾を外部に転嫁する必要があった。現在政府は中日友好を宣伝しているが、民間の感情はこれに反発している。これは政府がこれまで過度に(日本への)憎しみを宣伝してきた結果だ」と指摘している。

「共存共栄」という字句を使ったことについて、清華大学の日本問題研究者、劉江永氏は同じくRFAの取材に、「(環球時報などの)メディアの社説を書く記者は比較的若いので、言葉使いについて専門的でも厳密でもなく、人々の反感を招きやすい」と答えている。

だとすれば環球時報の記者は抗日ドラマをもっと見て学ぶべきではと、冗談を言いたくなるが、知っていてわざとやった可能性など、疑問が尽きない。

環球時報のような、政府の都合に合わせて日本への態度を一変させるメディアだけを見ていても、中国の世論がどこにあるのかは分かりにくい。では中国社会は現在の日中関係をどう見ているのか、いくつかの見解を紹介したい。