階級はつねに作り変えられてきた
ここまで、『キングスマン』や『わたしはダニエル・ブレイク』といった映画作品、そしてわたし自身のウェールズ体験を手がかりに、現在のイギリスの階級、とりわけ労働者階級に何が起きているのかを論じた。ここには、本連載で物語ろうとしているイギリス労働者階級の重要な要素が出そろっているだろう。
まずはコミュニティとしての階級。イギリスの労働者階級が、単なる経済的なカテゴリーではなくお互いの生活を助け合うようなコミュニティとなったのはどのような経緯にやるものだろうか。この点を理解するためには、労働者階級が誕生した19世紀へとさかのぼる必要があるだろう。
そして、20世紀の労働者階級の物語は、それが労働党という形で政治的な表現と力を得る物語であると同時に、逆説的にもその解体の物語となる。それは個人の階級上昇の物語であると同時に、集団としての労働者階級が中流階級化していくプロセスの問題でもある。
わたしはこの物語を通して、労働者階級をコミュニティとして保存すべきだ、もしくはそうではなく労働者階級は解体されるべきだと主張したいわけではない。そうではなく、この物語でわたしが示したいのは、労働者階級は、そして階級そのものは、つねに作りかえられてきたということだ。
その作りかえは、歴史的現実の問題であると同時に、わたしたちが階級をどのように物語り、認識するかという問題でもある。わたしたちの現代日本社会がどのような社会になっていくのかを考えるにあたって、そのような意味での階級の作りかえの問題は大きなヒントを与えてくれるはずだ。
(連載第2回に続く)