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やがて始まる「マンション価格下落のタイミング」はこう見抜け

エコノミスト兼個人投資家の独自手法

転換点となる「かぼちゃの馬車」破綻

今年の1月、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズ社が経営に行き詰り、数百人のオーナーに対して保証していたサブリース賃料の支払いを停止すると報道された。この報道に接して「ああ、ついに始まったな」と感じた人は私以外にも少なくないはずだ。

結局、同社は民事再生法の適用を申請したが、棄却され、破産手続きが開始された(今年5月)。また、同社関連のアパート融資の大半を数々の不正手続きを伴う形でスルガ銀行が行っていたことも露呈した。

スマートデイズもスルガ銀行も、控えめに言ってもかなり無理筋の営業をしていたことは、同業界内の人達の間ではおおむね「公然の秘密」だったと思う。

筆者のような、個人投資家として片手間でマンション投資をしている、いわば外野席の者にも、そうした感触は、風聞やメディア記事を通じてぷんぷんと臭っていたからだ。

この事件を契機にアパート・マンション投資に対する銀行の融資姿勢は再び硬化しそうだ。

1980年代後半の不動産バブルの頃から、銀行のアパート・マンション投資に対する融資は、過度に積極的な姿勢と、「羹に懲りて膾を吹く」ような過度に消極的な姿勢を振り子のように幾度か振れてきた。

筆者は本業のかたわら個人投資家として、中古のマンション投資を始めてから20年となる。始めた最初の年は1998年であり、銀行不良債権危機で深刻な不況となった時だ。

おそらく「今が底値圏だ」という直感的な判断で始めたのだが、その後、エコノミストとして東京を中心にマンション市場のマクロ動向を分析し、マンションの購入と売却のタイミングを判断する多少役に立つ知恵を得た。

過去何度か著作の中で紹介しているが、改めてそれに基づいた現在と今後の市況についての判断をご説明しよう。

 

マンション市況割高・割安の見抜き方

まず図表1が、一般財団法人・日本不動産研究所の「不動研住宅価格指数」として公表されている東京の中古マンション価格指数(赤線、以下「マンション価格指数」と記す)、ならびにアットホーム株式会社が公表しているマンション賃料インデックス(東京、緑線、以下「賃料指数」)に基づいたグラフである。

図表1

また青色線はマンション価格指数を賃料指数で割ったPRR(Price Rent Ratio)である。これは株価収益率(PER=株価/1株当たり利益)に相当するものだ。

資産のファンダメンタルな価値とは、それを所有することで得られる将来にわたる純所得(株式なら配当、住宅など不動産なら賃料)の現在価値の合計である。

ところが株価については将来にわたる配当やその源泉である純利益は実に不確実で、中長期の予想の信頼度はとても低い。一方、住宅の賃料は企業利益に比べると実に安定しており、またその長期的な平均伸び率は日本でも米国でも物価上昇率に近い。

なぜ安定しているかと言うと、住宅賃料は家計所得から払われ、家計所得の変動は企業利益の変動よりもはるかに安定的だからだ。

一方、住宅価格の変動は賃料よりも大きなものになる。その結果、賃料のキャッシュフローから計算されるファンダメンタルな価値から過大評価にも、過小評価にもなる。

なぜ価格の変動性が大きいかと言うと、それには2つの説明が可能だろう。

ひとつの説明は先に示した通り、住宅資産のファンダメンタル価値の計算原理自体に基づいている。ファンダメンタルな価値は、将来にわたって得られる純賃料を割引率で割って得られる現在価値だと述べた。

もし残存寿命が40年あるマンションの場合、割引率5%を前提に計算すると、将来の賃料伸び率が0%から1%に上がると、現在価値の総額は16%も大きくなる。

将来の賃料は誰も事前にはわからない。景気が良くて先行き楽観的なムードが支配している時期には将来の期待賃料の伸び率が高めになり、逆に不況で悲観的な時期にはそれは低くなると考えられる。その変化が1%でも、住宅価格はそれだけで10~20%も変動し得ることになる。

もうひとつ別の視点から説明すると、住宅はその購入がローンで払われる場合が多いからだろう。

月々の家計所得から払われる賃料は大きく変動し難いが、購入はローンであがなわれる場合が多いので、価格が大きく上昇してもローンを増やすことで買ってしまう購入者が多いからだ。つまり金融レバレッジの伸縮に強く依存して変動するのだ。