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なぜ日本は、アメリカによる「核ミサイル配備」を拒否できないのか

理由は岸が結んだ「密約」にあった

「終戦宣言」へと向かう朝鮮半島。一方、中距離核ミサイル(INF)の全廃条約破棄を宣言したアメリカ。一見、矛盾するように見えるこの動きは、実は同じコインのウラとオモテなのだと、ノンフィクション作家の矢部宏治氏は指摘する。このままでは、朝鮮半島から米軍が撤退する代わりに、日本に米軍の核ミサイルが配備されてしまう可能性が非常に高いというのだ。

10万部を突破したベストセラー『知ってはいけない――隠された日本支配の構造』で、アメリカとの異常な従属関係の本質を解き明かした矢部氏が、最新作『知ってはいけない2——日本の主権はこうして失われた』(11月14日発売予定)で新たに描き出したのは、世界中の国のなかでなぜ日本だけが、そうした異常なアメリカの軍事支配から抜け出せないのかという戦後日本〝最後の謎〟だった――。

主権の回復へ向かう韓国と、状況が悪化する日本

1年前には誰も予想できなかったことだが、今年の3月、突然朝鮮半島で劇的な南北の緊張緩和が始まり、6月には歴史的な米朝首脳会談も行われた。平和条約締結へのタイムテーブルはまだわからないが、「終戦宣言」そのものは、いつ出されてもおかしくない状況となっている。

一方、先月〔10月〕の20日、アメリカのトランプ大統領は、約30年間続いたロシアとの中距離核ミサイル(INF)全廃条約の破棄を表明した。

私のような日米の軍事上のウラの取り決めばかりを見ている人間からすれば、一見、矛盾するように見える、この2つの動きの意味するところは明らかだ。

つまり、スピードはどうあれ、すでに制空権を失い、反米軍基地運動も強力な韓国から、やがて米軍は撤退していく。その過程で、日本にとって「対米従属の最後のお友達」だった韓国の国家主権も、しだいに回復していくことになるだろう。

しかしその一方、日本の状況は悪化する。同じく制空権を失った、すべての自衛隊基地と米軍基地のあいだで共同使用が進み、そこにやがて対中国・ロシア用の中距離核ミサイルが配備されることになる。そして米軍の主要部隊はグアムその他へ撤退するが、「共同基地」に配備された核ミサイルの発射ボタンは米軍が握り続けるのだ……。

 

たんなる悪夢だと思われるだろうか。そうではない。すでに何十年も前から、「全自衛隊基地の米軍共同使用」と「日本の陸上基地への核ミサイルの配備」は、アメリカの軍産複合体が具体的な目標としてきた現実なのだ。日本国民の抵抗が弱ければ、必ず実現するだろう。

なぜ韓国にできる国家主権の回復が、日本にだけはできないのか。最新刊『知ってはいけない2——日本の主権はこうして失われた』を書く過程でわかったことだが、その最大の原因は、現在の安倍首相の祖父である岸首相が「安保改定」で結んだ「3つの密約」にあったのである。

岸が結んだ密約中の密約「討議の記録」

みなさんは「討議の記録」という密約文書について、聞いたことがあるだろうか。

安保改定で藤山外務大臣が1960年1月6日にサインした、密約中の密約「討議の記録」
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これは安保改定時に岸政権がアメリカ政府と結んだ、「密約中の密約」といっていいほど重要な超極秘文書(藤山外務大臣がサインした)なのだが、おそらく普通の人はほとんどその名前さえ知らないだろう。

戦後日本における圧倒的な米軍従属体制(いわゆる「安保村」)のなかで、この密約文書は50年ものあいだその存在を隠蔽され続け、いまからわずか8年前(2010年)になってようやく「文書の存在」そのものは公認されたものの、その後も外務省から「こんな文書に効力はない」と、その法的有効性を否定され続けているからだ。

現在も、日本のほとんどの有識者たち(大学教授、官僚、メディア関係者)が、この外務省の説明を疑わずに信じている。その意味で、やはり「戦後日本(=安保村)」における社会科学の知的レベルは、世界一低いと言っていいだろう。

いかなる形態の文書であれ、外務大臣がサインした文書に法的拘束力があることなど、日本以外の国では高校生でも知っている事実だからである(「条約法に関するウィーン条約」第2条・7条・11条他を参照)。