イタタタタ…!「骨を切って延ばす」驚愕の最新美容外科事情

覆面ドクターのないしょ話 第38回
佐々木 次郎 プロフィール

驚愕! 「骨切り術」と「骨延長器」の効果

ところが! ところが! である。この30~40年の間に美容外科は大きな変化を遂げた。顔面の骨を大胆に操作できるようになったのである。

骨まで操作すると顔は明らかに変わる! まさに「踊る大操作戦」だ!

好例が「受け口(下顎前突症という)」の手術だ。

下顎前突症とは、下顎の歯が上顎より前に出ている状態をいう。下顎の大臼歯のさらに奥の骨を斜めに切って、下顎骨を後方にずらす。切った部分はワイヤーやスクリューで固定する。こうすることによって、飛び出た下顎が引っ込む。

骨を切って変形を矯正する手術を「骨切り術(こつきりじゅつ)」という。変わった読み方の術式名である。

 

下顎前突症を「骨切り術」で矯正したら、どうなるか? 手術前の、やせて何やら不満げな顔の印象が、手術後はふっくらとした優しい顔立ちになる。下顎前突症の例は、顔が変わる手術のうちの序の口、まだ初歩の初歩だ!

頭蓋顔面外科〈ずがいがんめんげか〉の発展により、頭蓋骨をはじめ、顔の骨、上顎骨および下顎骨などを骨切りして、様々な変形を矯正することができるようになった。あえて誤解を恐れずに言えば、顔の骨をバラバラにして組み立て直すことができるのである。

美容外科でもこの技術を応用して、昔とは比べものにならないハイレベルの手術で、「美しい顔にしてほしい」「別人に生まれ変わりたい」という患者さんの要望に応えられるようになってきている。

「骨切り術」では骨を切って移動した後、その位置で骨を固定する。だが一度では目標の美しさまでの移動距離が得られないケースがある。たとえば、くぼんだ顔立ちの骨を前に出したいとき、1cm延長したいのに、皮膚・神経・血管などの影響で0.5cmしか伸ばせないということがある。

そのようなときに有効なのが、「骨延長器」という道具である。

「骨延長器」の元々の開発の経緯について私は詳しく知らない。おそらく、整形外科分野で四肢の骨折部を皮膚の外から固定する「創外固定器」を応用したものではないかと推察する。

「創外固定器」とは、皮膚の外から骨にピンを刺入し、このピンを支柱で固定して骨折を治療するものである。この支柱の部分をノギスのように動かせるようにしたものが、「骨延長器」である。

まず、切った骨の両端にピンを刺入し、この器械を装着する。ねじを回して毎日少しずつ伸ばしていく。伸ばすと骨と骨の間には隙間ができる。この隙間には時間と共に新しい骨が形成される。

この操作を何度も繰り返し、最終的な移動距離が得られたら伸ばすのを止める。骨が丈夫に育った時点でこの装置を外す。この装置の最大のメリットは、目的の長さまで十分に骨を延長できることだ。

美容とは異なるが、この「骨延長器」を用いれば、身長を伸ばすことも可能である。下腿の骨を切り、「骨延長器」を装着して少しずつ伸ばせば、脚が伸びて結果として身長が伸びる(色々リスクはありますが……)。

骨を切って矯正する骨切り術はリスクも大きい。

手術自体が大がかりになるため、入院・全身麻酔が必要で、感染・出血にも注意を要する。骨を切るのだから、術後の痛みもある。術直後だけでなく、数年経っても、雨の日などに気圧が変化すれば、手術した部分が痛むこともある。

「骨延長器」のデメリットは骨切り術同様だが、入院が長期になる上、さらに体の表面に器械が装着されているため、その状態では人前には出られない。だから学校や仕事には行けない。