また、収入源に関しては説明するまでもないだろう。動物を飼育するには想像以上にお金もかかる。病気になったときに病院に連れていくことができるだけの収入は必須なのだ。単身者は、ネットなどでも話題になる部分だが、万が一のセフティーネット(後見人)は必要だと思っている。飼い主に万が一何かあったときに彼らは生きてはいかれないからだ。ネットでは、「独身男性が譲渡できない」と話題になるが、うちでは、性別は制限していない。ただ、独身男性の譲渡後の動物虐待事件などが続くことから警戒している団体もいるのだ。

私たちは、殺処分を減らすため動物を一時的に保護し、それぞれの個体に必要な治療を行い、人と上手に暮らせるように躾も行っている二度と不幸な目に合わないように、幸せに暮らすために人も動物も努力をしている。それなのに、再び放棄されたり、十分な世話を受けられない環境に送り出すのは、言い方が悪いが、穴の空いた袋にゴミを拾っているのと同じになってしまう。動物保護は、保護して譲渡して終わりなのではなく、譲渡した先で安全に暮らせることまで考えなくてはいけないからだ。

譲渡条件は「責任」を考えるきっかけ

ここまで読んでくださった方の中には、「結局、譲渡条件は厳しく、保護動物はあきらめろということなのか……」と思われた人もいるかもしれない。

でも、譲渡会でこんな方もいた。数年前に、譲渡会に来てくれた男性で、独身だった男性は仕事で留守がちだった。日々の世話や病気になったときなど、譲渡にあたり話し合ったところ、「今は迎えるべきではないのかもしれませんね」と残念ながら譲渡条件が合わず、お断りした。ところが、数年後に「結婚をして落ち着いたので、あたらめて猫を迎えたいと思う」と夫婦揃って譲渡会に来てくれた。保護活動を長く続けてきてよかったとしみじみ感じる瞬間だ。譲渡条件が合わず断ってしまうと、お互いに少し気まずい雰囲気になるここともある。でも、最近は理解してくれる方も増え、「条件が整ったら、ぜひ来ます」と笑顔で帰られる方も増えている。

譲渡条件がクリアできても、動物との相性などをみるためにトライアル期間も設けている。慎重な譲渡が結局は殺処分を減らすことになる。写真/山内信也

「独身だと譲渡できないからペットショップ」という話ではなく、保護動物かペットショップの論争よりも先に、今自分は動物を飼うのに適したタイミングなのか慎重に考えるべきだと思う。これは保護動物だけでなく、ペットショップで購入した動物であっても同じだ。

犬も猫もご長寿が増えた。動物たちが年を取れば、人間と同じように医療費もかかり、介護に時間も使うことになる。犬や猫は自分で歩いて病院にはいかない。生涯人間がケアしていかねばならないのだ。譲渡条件はそういったことを“考えるきっかけ”と思ってほしい。

逆を言えば、譲渡条件が少し揃ってなくても、このあたりの問題を真剣に考え、何かあったときのフォロー体制が出来ている人であれば、譲渡されることも意外と多くある。譲渡条件だけ見て「めんどくさい」と切り捨てず、その先にあるものを知ってほしいと思うのだ。

しつけも健康面もメリットが大きい保護動物

もうひとつ、動物譲渡を阻む誤解がある。それは、「保護犬や保護猫は飼いにくい、不健康である」という噂だ。確かに、劣悪な環境で飼育放棄された犬や猫の中には心に大きな傷を受けるものもいる。また、しつけができないことを理由に放棄され、保護したときにはトイレトレーニングすら出来てないケースもある。

でも、保護された犬猫は、団体施設やボランティア家族の中で、トイレトレーニングや散歩(犬の場合)、歯磨きなどの練習もする。多くの愛護団体は、二度と放棄されないように、人との関係性が築ける状態になってから譲渡している。ペットショップはしつけされてない状態なので、保護動物のほうが圧倒的に飼育はしやすい。

また、ペットショップでは通常行われない血液検査や各種健康診断、不妊去勢手術、マイクロチップ挿入などの医療行為、ワクチン接種なども行われてから譲渡される。保護動物は弱い、不健康である、飼いにくいという先入観は捨てて、自分のライフスタイルに合う動物を探してほしいと思う。

動物との暮らしは、他では得られない笑顔や喜びも大きい。動物と暮らしたいと思う気持ちに罪はない。だた、自力で生きて行くことのできないペットとして飼われている動物は、飼われた家庭や飼い主が生涯のすべてだ。自分と20年間生活をして幸せだろうか、と私自身も常に問いかけたいと思っている。