写真提供(一部):ペイミー

「おカネがないから諦める世界」を変えるペイミーの「給与即日払い」

働き方とともに「給料」も自由化しよう

「僕はとにかく、世界をよくしたいんです。名前も財産も今はまだないけれど、可能性に満ちている人たちが、おカネの問題で何かを諦めることがない世界を作りたい。夢はノーベル平和賞。本気で、ありえると思っています」

真剣な眼差しでそう語るのは、後藤道輝ペイミーCEO。今、1992年生まれのミレニアルが立ち上げた、給与即日払いサービス「Payme」を展開するベンチャー企業が注目されている。

給料日にかかわらず給与が手に入れば、「おカネがないから諦める」機会は圧倒的に減る。一方で、貧しい層から手数料を巻き上げる「貧テック」ではないかという批判もある。ペイミーの「給与即日払い」は、一体誰を救うのか。

取材・文/伊藤達也

190社以上が利用する「給与の前払い」サービス

ペイミーが一石を投じるのは、誰もが当たり前のように受け入れていた日本の給与システムだ。

「日本の給与の仕組みは50年以上変わっていない。月末締めの翌月払い。でもこれって、もっと自由にできるんじゃないか、と考えたんです」

後藤氏がペイミーで手がけるのは、福利厚生としての「給与の即日払い」サービスだ。シンプルに言うと、ペイミーと代行契約を交わした企業で働く人ならば、専用ウェブサイト・アプリから手数料を払って申請することで、働いた分の給与の70%までを最短即日で受け取ることができる。冠婚葬祭や事故など、急な出費に対応できる、給与所得者にとっては有り難いサービスだ。

*「Payme」の使用イメージがわかる動画

面倒な日払いの処理を代行してくれるメリットのおかげで、飲食チェーン・人材派遣・小売・コールセンター、アミューズメント、物流などを中心に190社以上が導入。また、今年5月にはSBJ銀行と、7月にはセブン銀行と、9月には東京スター銀行と提携するなど、事業を拡大し続けている。

 

「貧テック」という誤解を解く

ただ、疑問も浮かぶ。給料日にかかわらず自由に給与が手に入ることで、カネ使いが荒くなってしまうのではないか。キャッシングローンを組めない、カードを持てない人を対象に手数料を巻き上げる新種の「貧困ビジネス」なのではないか――。

はたして、「給与即日払いサービス」は新しい働き方、おカネの使い方を支える事業なのか、もしくは「貧テック」としばしばネガティブに揶揄される貧困層向け金融ビジネスの亜種に過ぎないのか。

後藤氏自身も、ターゲットはBOP(Bottom Of Pyramid)、つまり低収入層であることを認める。ただし、「現在は」と限定的に話す。

本来のターゲットは、BOPの中でも、誤解を恐れずにいえば『将来価値が高いけど、現在価値が低い人』です。このような人々は、『HENRY』と呼ばれています。High Education Not Rich Yetの頭文字を取った言葉です。こうした将来価値の高い人が、目の前のおカネがないことで何かを諦める、ということをなくしていきたい。それが僕の願いです。

例えば、新大学生や新社会人が4月から働き始めても、給与が入ってくるのは基本的に5月末です。新生活をスタートさせたばかりでおカネがなくて、飲み会やイベントなんかにも参加できない。そんな場合に、4月にもらえる1万円と、5月末になってようやく手に入る1万600円、どちらの価値が高いでしょうか。若い時に経験しておくべき貴重な体験が奪われる、と僕は思うんです」

事業ターゲットが分類されている後藤社長のノート

コンビニや飲食店で、時給1000円以下でバイトしているけれど、きちんと勉強して就職したり起業すれば将来は高収入を見込める。奨学金を抱えた大学生や、最近では海外からの留学生にもこのHENRYに当てはまる人は多いだろう。また、そうした若者たちをアルバイトで雇っている企業にとっても、ペイミーは魅力的なサービスだ。

「例えば、アメリカでは給与は2週間後に支払われるのが一般的だし、翌月末払いという日本の給与の慣習は外国人には馴染みがないんですよね。彼らとしてはすぐにおカネをもらいたいけれど、会社はそれに対応していないという問題がかなり多くの現場で起こっているんです。

だから、販売店や飲食店など大学生や留学生の多い業態との相性がいいサービスでもあるんです」