セックス、ドラッグ、インターネットの果てに見つけたモノ

駄青春日記~マヌケな地獄の黙示録~⑤
王谷 晶 プロフィール

勇気を出してやらんで帰ってほしい

ある日物凄く久しぶりにMSNメッセンジャーを立ち上げたら、Xさんが応答してくれた。また東京行こうと思ってますと言うと、励ましの言葉と共に「何があっても書き続けなさいね」と言われた。そうか、と思った。私は書く人間だった、そういえば。

28歳。最小限の荷物と貯めたバイト代を持って、半分家出みたいな勢いで再上京した。仕事も何も決まっておらず、ボロいシェアハウスで暮らしながら日雇いのライン工、警備員、ブラック企業、サポセンetcを渡り歩きひたすら働いた。

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パワハラにもセクハラにも相変わらず直面したが、Twitterを始め、自分と同じような性被害に遭っている人がたくさんいるのを初めてリアルに感じられた。そして、誰にも相談せず警察にも訴えなかったあれらのことは、怒っていいんだと気がついた。思えば喜怒哀楽のうち、怒があんまりない人生だった。でもほんとは怒りたかったんだ、いろんなことに。

その合間になんとか文章を書く仕事を得ようと売り込みや投稿を続けた。そしてアホの極みだが、まだプロジェクトHは諦めていなかった。ただ、前ほど思い込みは強くなくなっていた。思い出したように異性間交際を「試し」ては、やっぱだめだな……と落胆し。そんな自分にも相手にも失礼極まりない遠回りを繰り返し、30歳になってやっと自分のセクシュアリティに自分で納得した。

やっぱ、女が好きだわ……。そう認めると、初めて物心がついた気がした。30歳児の爆誕である。

 

実は本稿は今回が最終回で、なのでちょっと後半駆け足になってしまったが、何が言いたいかというと、私は今も頭髪の薄い借金まみれの太った中年で長いこと恋人もいないが、でも生きている。

小さな失敗とクリティカルな失敗を何度かやらかしたけど、まだ生きている。もう少し自分の内面をちゃんと見つめていたら、もう少し将来の計画というもの立てていたら、確実に避けられていた失敗もいっぱいしている(現在進行系)。でも生きている。

そして自分が本当に好きだなと思った人に、好きですと言えている。だいたいフラれますけど。

現在37歳。年明けで38になる。思い描いていた「ちゃんとした大人」にはぜんっぜんなれていないし今後もなれないと思うけど、自分が何を欲しているのかよくよく内心に耳を傾けることの大事さだけは身に沁みた。自分の欲求を自分で認めるまでメチャクチャな遠回りをしてしまったから。

今はネットがあるし、セクシュアリティに関するネット上の情報もゴミクズ情報と同じくらいちゃんとしたものも増えてきたから、20年前よりはもうちょっとマシな世の中になってるんじゃないかな。どうかな。なってるといいな。

でももしやりたくもない相手となんとなくやっちゃいそうな流れになってしまったとき、こういう失敗遠回り人間がいたことを思い出してほしい。そして勇気を出してやらんで帰ってほしい。減るもんじゃなしとはいうけど、減りますからねあれは。いろいろと。

ちなみにXさんとは今はLINEとFacebookでやりとりしている。本を出したことを、正直一番強く伝えたかったのは死んだ祖父より両親よりもXさんだった。書き続けてます。売れてないけど、なんとかやってます。まだまだ書き続けるので、どこかでまた見かけたら、ぜひ読んでやってください。

〈おわり〉