セックス、ドラッグ、インターネットの果てに見つけたモノ

駄青春日記~マヌケな地獄の黙示録~⑤
王谷 晶 プロフィール

まだだ……まだ私は北関東にいる……

そしてある夜とうとう何かがプツーンと切れてしまい、死んでもすまいと思っていたことをとうとうやってしまった。実家に電話をかけ、泣き言を、というか半分泣きながら生活のつらみを親にぶちまけてしまったのだ。

元から弱いメンタルが一回折れてしまうと、もうだめだった。ちょうど実家が新しい商売を始めた時期で人手が欲しいというので、私は「一旦帰る……」と言ってしまった。チューしたおねえさんからのメール無視事件につぐ、MY人生重大ミステイクのうちのひとつである。

仕事は(当然)引き止められもせずあっさり辞めることができた。でも社長がけっこういい人で、ライティングだけはできるんだからそういう仕事は回してやるよと言ってくれた。その頃には実家にもネット回線とiMacが投入されており、家のボロさはそのままでもデジタル環境は整っているというサイバーパンクな状態になっていた。

実家に帰る前に、最後に東京の大きな映画館で映画が見たくて、今は無き新宿ミラノ座で『地獄の黙示録 特別完全版』を一人で鑑賞した。冒頭、べろんべろんに酔っ払ったパンツ一丁のウィラード大尉が「くそっ……俺はまだベトナムにいる……」とハイパーうんざり顔でモノローグする。数年後、まさか自分がほぼ同じセリフを同じ格好で吐きながら実家でべろんべろんになっているとはその時は想像もしなかった。まだだ……まだ私は北関東にいる……。

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ところで、ネットが使えたんだから自分のセクシュアリティについて調べたりしなかったのか?と疑問に思う人もいるでしょう。調べはした。当時みんなハマってた匿名掲示板「2ちゃんねる」に「同性愛サロン」という板があるのに気付き、ここなら自分と同じようにわけのわからんことになっている人が見つかるんじゃないかと思いアクセスした。

しかしそこは女を「マンコ」「腐マンコ」と呼んでdisりまくっているミソジニックな吹き溜まりで、求めていた情報やスレッドを見つけることはできなかった。毒気にあてられて嫌になってしまって、私はネットで真面目なことを調べるのを諦めた。

尾羽打ち枯らして22歳。たった4年の上京生活にピリオドを打って、借金だけを増やして私は実家に戻った。最初のうちは通勤電車から開放された歓びに浸っていたが、正直人生終わったなと思った。恐ろしいのは、終わっているのに終わっていないところだ。長寿の家系である。アベレージで考えてもあと6~70年、終わりっぱなしで生きる計算になる。呆然とした。

 

死ぬまでの暇つぶしが必要だ。当時、インターネット界隈ではテキストサイトのブームが続いていた。まだみんな個人サイトをhtmlで作っていた時代である。私も流行りに乗ってよくわからん個人サイトを作った。映画の感想とか描いたイラストとか二次創作小説とかコラ画像(著作権とかに対する意識がまるでありませんでした)なんかをただダラダラアップするお砂場のようなサイトだ。

日記の更新は毎日大量に続けていた。一日中ボロ家から出ずに引きこもっているのに書きたいネタがあとからあとから湧いてきた。大半はネットのニュースを枕にした大喜利ネタだったり、レンタルで観た映画や買った漫画の感想だったり、自分の失敗を面白おかしく脚色した自虐ネタだったり、まあよくあるやつです。