沖縄の伝統まで「中国脅威論」を煽るために利用されるこの現実

「龍柱」は中国への服従を示す象徴か?
安田 浩一 プロフィール

「なぜシーサーではないのか」という異論も

「龍柱」は中国の属国であることを意味している──そうしたウワサ話がネット上にあふれた。

というのも、この「龍柱」計画が、習近平氏の中国共産党総書記就任とほぼ同時期に打ち出されたため、翁長氏から習氏に向けた「就任祝い」ではないかと一部の人々から勘繰られたのである。

 

「龍柱」計画が持ち上がってからは、中国絡みの批判が飛び交った。

・中国への服従を示すシンボル像
・「龍柱」の頭が海の方角を向いているのは、中国海軍を招き入れるため

こうした文言はネットの書き込みだけでなく、地元の右翼や保守系団体も"県政・市政攻撃"の材料として用いた。

「沖縄のシンボルであるならば、シーサーにすべきだ。あえて龍としたのは中国を意識したからに違いない」

いまでも、そう批判する向きは少なくない。

龍の爪の数を問題視する者も多かった。というのも、中国では龍の爪が5本であるのに対し、龍柱は4本爪だ。5本爪は中国のみで使われ、かつて属国の立場とされた周辺諸国は4本爪を用いてきたというのが通説だ。よって、今回の「龍柱」も、「中国の属国を表したもの」だとする"見解"が広まっている。

前出の市の担当者によれば、建設中から電話やメールによる抗議が相次いだのはもちろんのこと、工事現場での抗議活動も繰り返されたという。

2016年には「龍柱」の下部に黒ペンキで「おなが ばいこくど」と落書きした男性が器物破損の容疑で逮捕された。

ちなみに「龍柱」と中国の脅威を結びつけたものとしてわかりやすいのは、幸福実現党が作成した小冊子である(前編でも一部を紹介した)。これは沖縄県内でもかなりの広範囲で配布されたものだ。

〈謎の「龍柱」の建設計画 「中国属国のシンボルか!?」〉

中国脅威を煽る小冊子(表紙)

そうしたタイトルが付けられた小冊子には、中国による沖縄侵略を描いた漫画が掲載されている。

ある時、ついに中国軍が沖縄本島に上陸した。
中国軍人たちが小銃を掲げて叫ぶ。
「目印の龍柱が見えたぞ! 全軍後へ続け!」
中国軍は若狭の龍柱の間を通って県庁に向けて進軍する。
軍人たちは県庁の知事執務室に突入。さらに那覇市内に潜んでいた民兵(観光客をイメージした絵柄となっている)も、県内マスコミの社屋を制圧する――といったストーリーだ。

冊子に掲載されたまんが

ここでも「龍柱」はまさに中国の侵略を呼び寄せるシンボルとして描かれている。