沖縄の伝統まで「中国脅威論」を煽るために利用されるこの現実

「龍柱」は中国への服従を示す象徴か?

ジャーナリストの安田浩一氏が陰謀論や都市伝説を徹底取材する「安田浩一ミステリー調査班(通称YMR)」。沖縄に流布する陰謀論「中国脅威論」の実態を探る「沖縄編」の後編をお送りします(前編はこちら)。

「龍の柱」と中国脅威論

沖縄の海の玄関口といえば、那覇市の若狭地区である。

すぐ近くの港には大型クルーズ船が停泊する客船ターミナルがあり、下船した外国人観光客が歩く姿を見かける機会も少なくない。

 

上陸した観光客を迎えるのは、道路を挟んで建つ2本の龍柱(龍を形どった柱)だ。
高さ約15メートル、幅は約3メートル。とぐろを巻き、鎌首を持ち上げたデザインは、間近で見上げれば圧倒的な迫力が伝わってくる。玄関口にふさわしい巨大なモニュメントだ。

若狭で観光客を迎える龍柱

この「龍柱」が完成したのは2015年12月。故・翁長雄志前知事が那覇市長だった時代に計画したものだ。

事業主体の市は次のように説明する。

「中国・福州市との友好都市締結の30周年記念事業として建てられました。龍柱の建つ若狭は客船ターミナルの目の前であり、しかも空港から市中心部へと向かう那覇西道路にも面しています。玄関口ということを考えれば、これ以上の場所はありません」(都市みらい部・花とみどり課)

近くの公園でグラウンドゴルフを楽しんでいた老人も、「那覇の新しいシンボル」だと胸を張る。

「クルーズ船が到着するたびに、観光客が龍柱を見上げては写真を撮っています。もう少し宣伝してくれれば観光名所として定着するかもしれない」

足元ではそんな期待もあるのだが、実は必ずしも市民みなに受け容れられているわけではない。

下の写真を見ていただきたい。

先ごろおこなわれた那覇市長選で、城間幹子市長(再選)に挑んだ対抗陣営が配布したチラシである。

〈私たちの税金3億3000万円で龍の石柱をつくってしまった…〉

那覇市長選で配布されたチラシ

チラシには、うなだれた市民のイラストが添えられている。

これはいったいどういうことなのか。地元記者が解説する。

「要するに当初の計画よりも予算が大幅に増えてしまったのです。最初は龍も一体だけでしたが、門としてふさわしくするため2体に変更。さらに工事も遅れたため、当て込んでいた国の一括交付金の一部が受け取れなくなりました、当初こそ市の負担は5000万円程度と見込まれていましたが、結果として市は総額約3億3000万円のうち、約2億2000万円を負担しなければならなくなりました」

こうした経緯もあり、先の市長選においては、翁長県政と連携してきた城間氏に対し、「無駄遣いの責任を取れ」とばかりの批判や攻撃が加えられたのであった。

だが、「龍柱」批判の本質は、けっして「無駄遣い批判」ではない。やはり、ここぞとばかりに中国脅威論を結びつけられたのである。