ホーキング博士によるサイン代わりの母印入り著書 Photo by Frank Augstein / AP

予想を上回る高騰!  ホーキング博士の車イス、オークションに登場

予価2000万円の論文など22点が…
2018年3月に逝去したスティーヴン・ホーキング博士の遺品がオークションに出品された。車イスにはじまり、博士の科学研究の軌跡において重要な論文など22点が、ロンドンで展示され、落札者を待つ。その結果は──。

病気のせいで震える、手書きの署名も

スティーヴン・ホーキングは、宇宙のように無限の発想力を持った人物だった。多くの人に影響を与えた物理学者だった。そして世界的な有名人だった。

博士が独特な存在であったことは、今回オークションに出品された彼の遺品にも表れている。出品されるのは、難解な科学論文、世界で最も象徴的な車いすの1台、そして「ザ・シンプソンズ」の台本などだ。

このオンラインオークションは、オークション業者のクリスティーズが10月22日に発表したものだ。リストには、宇宙の起源についての博士論文や、多数の受賞メダルなどの一部、「ワームホールのスペクトル」や「重力崩壊における物理学の根本的破綻」といった科学論文など、ホーキングの遺品22点が含まれている。

 

クリスティーズの書籍・原稿部門の責任者トーマス・ヴェニング氏は、これらの論文は「彼の思考、つまり興奮するような素晴らしい知性の発展過程をたどる」ものだとしている。

「ホーキング博士がその思考を生み出して、科学コミュニティに広めていく様子を、段階を追って見ることができる」(ヴェニング氏)

もちろん、「ブラックホールを世に知らしめた宇宙物理学者」という科学者としての地位は、ホーキング博士が有名である理由の一部でしかない。

22歳で運動ニューロン疾患と診断され、余命がわずか数年と宣告されたホーキング博士は、その後何十年も生きぬいて、今年3月に76歳で亡くなった。

今回のオークションには、ホーキング博士が1965年にケンブリッジ大学に提出した博士論文「膨張する宇宙の特性について」の現存する5部のうちの1部が含まれている。この論文には、10万ポンドから15万ポンド(約1400万円から2100万円 )の予想価格がつけられている。

この博士論文には、病気のせいで震える、ホーキング博士の手書きの署名がある。

ヴェニング氏は、この博士論文が、ホーキング博士の科学研究の系譜をたどるうえで重要な文書であると同時に、そこからは博士の個人的な物語が垣間見えると語る。

「彼はケンブリッジ大学に移り、博士課程で研究を始めたばかりのときに、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された。ひどく落胆して、しばらく研究を中断してしまった」(ヴェニング氏)

この博士論文は「博士が再び科学研究に打ち込んだ成果」であり、ホーキング博士は「それからの人生ずっと、科学研究を手放さなかった」とヴェニング氏は言う。

やがてホーキング博士はALSによって、ほぼ完全な麻痺状態になった。音声合成コンピューターを通じて意思疎通し、ハイテク車イスで移動した。その歴代の車椅子のうち1台が今回のオークションに出品されており、1万ポンドから1万5000ポンド(約140万円から210万円 )の予想価格がついている。

この車イスによる収益は、スティーヴン・ホーキング財団と運動ニューロン疾患協会という2つの慈善団体に寄付される予定だ。

ヴェニング氏は、この車イスはホーキング博士の身体的障害だけでなく、「いたずらっぽいユーモアのセンス」を象徴する存在だとする。