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世界の株式市場はなぜ総崩れに?露呈した「モメンタム投資」の弱点

感情なき「マシーン」たちのつまずき
先月、世界の株式市場は総崩れした。株価の「モメンタム(勢い)」を重視するファンドが増加したことが、下落の要因の一つとみられる。加えてアルゴリズムに基づき、超高速で鞘取りを続ける「HFT」も混乱を招いている。
米国の投資運用会社で働いた経験があり、『マネーの代理人たち』の著書もある小出・フィッシャー・美奈氏が、「マシーン」の存在感が肥大した市場の現状に警鐘を鳴らす。

恐怖と欲の間で揺れる「ランダムウォーク」

この10月、世界の株価チャートが一斉に下を向いた。最期の2日で少し持ち直したが、月間パフォーマンスは、TOPIXがマイナス9%、米国S&PとMSCIワールドがどちらもマイナス7%前後となった。どのチャートを見てもガクンと落ち込んでいる。

では、こうした相場でプロからアマまで世界中の投資家が釘付けになっている「株価チャート」とはなんだろう。チャートはあくまで株価の推移を示すだけだ。投資先企業の業績指標でもない。それにもかかわらず、ああまた下がった、などと落ち込んだりしながら、なぜ世界中の投資家がチャートを見続けるのだろう。

それは、株価チャートが市場参加者の総体としての感情、「市場の気分」を読むためのツールとしてなかなか便利だからだ。

 

そして、株式市場を動かすその人間の感情とは「恐怖と欲」 だと昔からウォール街では言われてきた。「恐怖」が優勢なベア(弱気)市場なのか、それとも「欲」が支配するブル(強気)マーケットなのかーープロのトレーダーから個人のデイトレーダーまで、チャートから微妙な市場の空気の変化を掴もうとする投資家は多い。

ちなみに世界で幅広く使われる「ローソク足チャート」は、江戸時代に米市場で栄えた大阪・堂島の商人によって編み出されたと言われる。終値が始値より高い場合は白の「陽線」、終値が始値より安い場合は黒の「陰線」で変化が示される。さらに黒と白の線の長さの変化を時系列に追う(変化の変化=微分)ことで、市場の気分の移り変わりや、そのタイミングを捉えようとするものだ。

「ローソク足チャート」Photo by iStock

株価のジグザグした動きは人間のバイオリズムや自然界のエネルギーの満ち引きにとても似ている。株式市場の予想がつかないジグザグ走行を「ランダムウォーク」というが、1900年に「投機の理論」で株式のランダムウォークを最初に指摘したのは、ルイ・バシュリエというフランス人数学者だった(時代の先を行き過ぎて評価されず、学者としては不遇をかこった)。

バシュリエのランダムウォークの発想の元をたどると、19世紀にイギリス人植物学者が、水に浮かべた花粉が勝手に動き回る現象を観察した「ブラウン運動」に行き着く。逆に、自然界を説明する理論として注目される「フラクタル」を導入したブノワ・ マンデルブロは、株価チャートを見ていてフラクタルを思いついたと言われる。

気象にも心電図にも波動がある。動物である人間が参加する市場の動きも、直線ではなく、引いては寄せる波のようなオーガニックな形をたどるもののようだ。