2018.10.31
# 企業・経営

キャッシュレス推進政策が開けたクレカ業界の「パンドラの箱」

経産相「手数料に上限」発言の妥当性
加谷 珪一 プロフィール

経産相の言うことは間違っていないが…

もっともカード会社の手数料が高いことがキャッシュレス普及の妨げになっているという状況は、徐々に変わりつつある。楽天EdyやSuicaといった電子マネーが普及してきたことや、最近ではQRコードを使ったスマホ決済など、新しい決済手段が登場してきており、競争環境は以前よりも厳しくなっている。

クレジットカードの手数料が、決済市場の動向を決めるというほどの状況ではなくなったが、決済ビジネスの中心に位置しているのが依然としてクレジットカード会社であるというのは紛れもない事実である。日本においてキャッシュレス化を進めるためには、手数料の引き下げが必要という同省の見解は、大筋としては間違っていない。

 

現金決済の基本インフラであるATM網の維持だけでも年間2兆円のコストがかっているほか、小売店や飲食店では、現金管理のため、より多くの労働者を雇う必要があり、これが人手不足に拍車をかけている。

安倍政権は、外国人観光客をターゲットにしたインバウンド・ビジネスを成長戦略の中核に据えているが、観光地の店舗の中にはカードが使えないところが多数あるため、外国人観光客の満足度を下げている。

しかしながら、手数料の引き下げとカード利用者へのポイント還元策を組み合わせるという今回の施策は、現実問題としてかなりの無理がある。
 
カード利用者へのポイント還元は、中小の事業者に対象を絞る方針とのことだが、どの店舗が対象となるのかカード会社側は把握できない。中小と認定を受けた事業者がカード会社側に申し出を行い、この事業者にのみポイントを付与できるようシステムを改修するという面倒なプロセスになる可能性が高く、1年でこれをやり切るのは至難の業だろう。

原則論として、経済産業省など中央官庁が民間のビジネスに介入するというのは、民主的な資本主義国としては望ましい姿ではない。通産省時代も含めて、同省の産業政策がうまくいったケースは少なく「日本の産業政策は屍累々」と揶揄する人もいる(昭和30年代、自動車メーカーには国際競争力がないとして通産省は再編をゴリ押し、各社は頑強にこれに抵抗した。トヨタやホンダがその後、どうなったのかを見れば結果は一目瞭然)。

QRコードなど、カード以外の決算手段が多数登場している現状を考えた場合、官は競争環境の整備という本来の役割に徹した方が、社会のキャッシュレス化をよりスムーズに進められるはずだ。

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