2018.10.31
# 企業・経営

キャッシュレス推進政策が開けたクレカ業界の「パンドラの箱」

経産相「手数料に上限」発言の妥当性
加谷 珪一 プロフィール

VISAやMasterはカードを発行していない

だが、手数料の水準によっては必ずしもそうとは言えなくなる。カード会社が徴収する手数料は、大手のネット通販事業者や量販店などは1%程度だが、一般的な小売店になると3%程度、取扱高が小さい場合には5%に達するケースがある。

さらに、スナックやクラブといったいわゆる夜のお店の場合、10%近い高額の手数料を徴収することもあるという。零細飲食店では最終的な利益が5%程度にしかならないこともザラなので、カード払いの場合には利益が吹き飛んでしまう。

 

この手数料は諸外国に比べて高いと言われているが、その理由のひとつは日本独特の市場環境にある。

クレジットカードのビジネスは主に3つの業務に分類することができる。ひとつはカードを発行する業務(イシュア)、もうひとつは加盟店の獲得や管理などを行う業務(アクワイアラ)、最後は国際的な決済ネットワークとブランドを提供する業務(VISAやMaster、JCBなどが相当)である。

〔PHOTO〕Gettyimages

VISAやMasterはカードを発行する会社と思っている人が多いかもしれないがそうではない。両社はあくまで国際的な決済インフラとブランドを提供する企業であってカードそのものは発行していない。一方、JCBのように、カードの発行から加盟店の獲得、国際ブランドの提供まですべてを自社で行う企業もある(日本企業で国際ブランド業務を提供できているのはJCBだけである)。

米国では、業界の水平分業化が進んでおり、一部のカード会社を除き、各業務を別々の企業が担当する傾向が顕著だが、日本ではイシュアとアクワイアラを兼務する企業が多い。このためアクワイアラ同士での競争が激しくないため、手数料が下がらなかったとの見方がある。世耕氏が指摘しているのは、こうした市場環境と考えられる。

もっともカード会社側にも言い分はある。カードを使った高額決済のサービスの中には、出会い系サイトなど消費者からの苦情が多数寄せられるものも多い。日本ではこうした被害について自己責任とは見なされなかったことから、カード会社は加盟店の審査を厳しくせざるを得ないという事情があった。

審査を厳しくすれば当然、加盟店の獲得コストが上昇し、加盟店の絶対数も増えない。こうした中で収益を確保するためには、ある程度、高額な手数料が必要というロジックである。

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