麻布、開成…難関中学の入試問題が教えてくれる「学力」の本当の意味

中学受験のプロが解説

入試を見れば分かること

間もなく、中学受験の本格シーズンを迎える。首都圏の入試日が集中する2月1日〜3日が過ぎると、親御さん方はひとまずほっとするだろうが、われわれ教える側にとっては、実はここからが「本番」。各難関校が今年はどんな問題を出したのか、その分析を行わなければならないからだ。

男女御三家の入試日にあたる2月1日が終わると、大手進学塾の四谷大塚が、その年の入試問題をいち早く発表する。これらに目を通すのは、毎年の風物詩のようなものだが、いつも私が真っ先に目を通すのは、麻布の理科の問題だ。

なぜなら、麻布の理科の問題は、“麻布らしさ”を最も表している入試だからだ。

私は長年にわたって難関校の入試を分析してきたが、本当に入試には学校の色が出るものだ、と毎年感嘆する。入試を見れば、「なるほど、この学校はいま、こんな生徒を求めているんだな」ということが分かる、と言っても過言ではない。

入試問題を見ることで、いま、日本の名門校がどんな学生たち(それは、未来の日本を支える人材でもある)を求めているのかを探ってみたいと思う。

 

麻布の理科を解くためには

まずは「最も麻布らしさ」が出る理科の問題から、麻布の求めるもの、を読み解いてみよう。

ラフな私服に金髪にピアス。なのに全国でも指折りの難関校。そのギャップを文化祭で目の当たりにし、麻布に憧れる親子は多い。

麻布では単に“勉強ができる子”は尊敬されない。それよりも音楽やスポーツ、あるいは鉄道にめちゃくちゃ詳しかったり、数学や物理の数式を一日中考えていたりするような、何か一つが抜きん出ている子が一目を置かれる。その校風は卒業生の職業にも表れ、政治家、発明家、小説家、ジャズピアニスト、コメディアンと実にバラエティに富んでいる。

麻布の教育の土台は「好奇心」。その好奇心の芽を見つけるために、麻布の理科の問題があるのだ。

麻布の理科は、とにかく問題文が長い。たった40分の制限時間内で、B5中とじで10ページ。「小学生にこんなに読ませるのか!」というくらい文字がぎっしり詰まっている。

しかも、問題文の素材は、学校や塾では触れることのない内容ばかりだ。2017年度は巨大昆虫と恐竜を素材にした「進化」の話、2018年度にはヤンバルクイナの生態や探査機カッシーニの活躍が取り上げられた。

知らないから解けない、では話にならない。知らなくても解ける。解く努力をするかどうかが問われるのだ。「長文」「初見の内容」……そういう問題を目の前に突き付けられたとき、「こんな長い文章は読めない」「塾で習っていないからわからない」と怯み、あきらめてしまう子は、この学校の合格の切符を手に入れることはできない。

まず問題をよく読み、「今わかっていること」と「問われていること」を明確に意識し、それをつなぐにはどうしたらよいかを因果関係で考え、試行錯誤して対峙していくほかない。

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要となるのは「理科への好奇心と興味の深さ」だ。理科が好きな子は、普段から図鑑などを愛読しているが、ただビジュアルに惹かれるレベルではなく、図鑑の端にあるような小さなコラムに至るまで読みあさるような好奇心がなければ、麻布の理科は解けない。

なぜか。そういう子は、なにか疑問があったら調べる習慣がついているため、「わからないことがわかると楽しい」という経験を幼いときからたくさんしているからだ。図鑑を読む習慣のあるような子は、麻布の理科をわくわくしながら解くはずだ。

さて、2018年度の理科入試も「麻布らしさ」がたくさん詰まった良質な問題だった。一般的に、中学受験では第一志望校の過去問は5年分解く。それより以前の問題を取り組んでも、問題が易しくなる傾向があり、あまり意味がないからだ。

だが、麻布の「難度」は一貫している。だから、何年も昔の問題を解いても力になる。麻布を受けるなら過去問は、最低でも10年分は解くべきだ、と指導している。