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100歳まで幸せに生きるために「受けない方がいいかもしれない手術」

一度立ち止まって考えることも必要

腰痛は手術ではほぼ治らない

医療の進歩とともに気軽に受けられるようになった手術の数々。しかし、軽い気持ちで受けた結果、「しなければよかった」「症状が悪化した」という例は後をたたない。

せっかく手術をしたところで、それが原因で歩けなくなったり、食べられなくなったりしてしまえば、元も子もない。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が語る。

「'12年から、米国内科専門医認定機構(ABIM)財団が、米国の医学界を巻き込んで始めた全米キャンペーンに『チュージング・ワイズリー』というものがあります。

直訳すれば、『賢く選ぶ』。診断、治療、予防における多くの選択肢から意味のあるものを選び、無駄な医療を減らそうというものです。特徴は医師たちが自ら必要でない医療を特定していることです」

 

なかでも「やるべきでない手術」としてまず挙げられるのが腰痛だ。手術をした結果、むしろ、症状が悪化することもままあるのだ。

「チュージング・ワイズリーでは、腰痛への医療行為は慎重にすべきだというのが共通認識になっています。いわんや手術をやです。

実際に手術をしても痛みが治まらず、結局、歩けない、座っていても辛いということになるケースもあります。脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニアの手術がその代表です」(室井氏)

そもそも腰痛は、手術をしたところであまり効果が期待できないと語るのは加茂整形外科医院院長の加茂淳氏だ。

「『神経が圧迫を受けているために痛みやしびれが生じる』という考え方自体が間違っています。現代医学では、そのような慢性の痛みは、中枢性の痛覚過敏だと言われています」

痛覚過敏はたとえるなら、火災報知器の故障のようなもの。火災報知器が過敏になってしまって、タバコに火を点けただけで火災報知器が鳴ってしまう。痛覚がそのような状態になったときに、慢性痛が起こるのだ。

「ところが、痛みがあって、整形外科に行くと、レントゲンやMRIを撮られてしまいます。

60代、70代の高齢者がMRIを撮れば、痛みがなく、健康な人でも、60~70%は脊柱管が狭くなっていますし、同程度の人がヘルニアだと言われています。それで無駄な手術を受けさせられ、症状が悪化してしまうのです」(加茂氏)

さらに恐ろしいのは予後がよくないために手術を重ねることだ。

「2回手術をやった人は全身に激しい痛みが生じる線維筋痛症の症状が出ることがあります。手術をすればするほど痛覚が過敏になり、痛みの範囲が広がっていくことがあるのです。

火事でたとえるならば、最初は一部屋だけのボヤだったのが、火が全体に広がって大火事になってしまうイメージです」(加茂氏)