「人生100年時代」のまやかし。年金は繰り上げてこそ価値がある

「損益分岐点16年8か月」に惑わされるな!
沢田 浩 プロフィール

100年生きられる男性は100人に1~2人!?

「みんな、人生が有限であることを忘れている気がするんです。だから、平均寿命が延びているからと、雇用延長を歓迎し、少しでも長く働いたうえで、年金を繰り下げることが得だと感じてしまうのではないでしょうか」

そう話し、さらにこう続けていた。

「だって、早く受け取ったところで、80歳時点の受け取り総額はほとんど変わらないんですよ。90歳、100歳まで生きてもらえれば、500万、800万と違ってくるのでしょう。それが得といわれれば、得かもしれない。でも、そこは予測不能。いまの国の誘導は、年金を遅らせばこれだけ有利という啓蒙をしているけれど、私のいた会社の諸先輩方も、平均寿命を迎える前に亡くなる方はけっこう多いんです。だから、90歳、100歳まで生きる男性に自分がなれるとは思っていないのです」(山田さん)

 

70歳までの雇用継続に対しても、山田さんの考え方は懐疑的だ。聞けば、山田さんの仕事人生は、営業の現場でストレスをため、神経をすり減らして働いてきた40年でもあったという。

「責任あるマネジメントに気力、体力を削って働き続けてきました。が、この先、若い頃と同じ働き方はできません。だから、退職したのです。第一、企業という組織に60歳、70歳がごろごろいるようでは、組織の新陳代謝もはかれない。企業には若い力が必要なんです。

もちろん、健康でストレスなく70歳を迎えても働けることは素晴らしいこと。そういう仕事を今後見つけていきたい。その仕事探しの、糧になるのが年金の繰り上げでもあるのです。それに、健康寿命のこともあるじゃないですか。だから、健康ないまの生活に年金を充てたいのです。早く受け取れることがいちばんのメリットです」(山田さん)

「健康寿命」とは、厚生労働省の研究班が推計している、「介護を受けたり寝たきりになったりせずに日常生活を送れる期間」をさす。2016年の推計では、男性は72.14歳、女性は74.79歳とされる。男女ともに平均寿命に対して、9年~12年ほどが、「生活に不自由のある期間」であることを示している。

となると、安倍内閣の「人生100年時代」も鵜呑みにはできない。100歳以上の人生を生きる人たちが今後増えることはよくわかった。そのうえで肝は、「どのくらいの確率で、私たちが100年を生きられるか」ということである。

厚労省や、総務省の公表資料からひも解くと、今年2018年に100歳を迎える人は、3万2241人(男性4453人、女性2万7788人)。いずれも、1918年生まれの人たちだが、その年の出生数179万1992人から導くと、実際に100年を生きる人の確率は、実に1.8%。うち、男性は0.49%。つまり、1000人に4~5人しか、100年を生きられないということだ。3万人近くが100歳を迎えた女性の場合でも、3.167%。多いといっても、100人に3人ほどである。

現在の日本の総人口1億2600万人に対する構成比では、100歳以上はわずかに0.1%である。日本の将来人口推計では、この比率が2040年には、0.3%と3倍となる。その推移からすると、2040年に人生100年を迎えるであろう人も、現在の3倍くらいにはなるだろう。男性では100人に1~2人、女性で10人に1人弱。これが「人生100年時代」の本当の実像のようである。

今後の少子化により、年金原資が減っていくのはもはや避けられないだろう。だから、働き手を増やす施策とともに、年金受給開始の時期はさらに繰り下げられ、そのうえで受給額も減額されるのは必至であろう。だとすれば、政府が喧伝する「人生100年時代」もまやかしのお題目と感じてしまう。

防衛策は「得られるものはできるだけ早く得る」ことだ。繰り上げてでも得る。そう感じてしまうのは、僕だけなのだろうか――。