「人生100年時代」のまやかし。年金は繰り上げてこそ価値がある

「損益分岐点16年8か月」に惑わされるな!
沢田 浩 プロフィール

年下配偶者「加給年金」の説明はなし

62歳で会社員を辞め、働きながら「特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)」を得始めた僕の場合も、年金事務所で相談の際は、繰り下げたケースの説明も受けた。

「特別支給の報酬比例部分は繰り下げの制度がありません。請求しなければ、権利がなくなるだけなんです。でも、65歳前に報酬比例部分を得ていた方も、65歳からの本来の老齢厚生年金は繰り下げられます。沢田さまの場合ですと……」
と、年金事務所では繰り下げることで得られる増分について、とても丁寧に説明していただいた記憶がある。

 

ただし、繰り下げにより失う可能性のある老齢厚生年金の「加給年金」についての説明はなかった。加給年金とは、会社員や公務員などの厚生年金や共済組合の加入者が受けられる一種の家族手当のような制度で、僕が65歳になった時点で、65歳未満の配偶者(僕の場合は妻)がいる場合に、受給額にプラスされる年金だ。

なぜ年下の配偶者がいると得られるのか、その制度が築かれた背景はよくわからない。が、少なくとも単身者には無関係な年金だ。その仕組みは複雑で制約も多いが、僕の場合では、妻が65歳になる時点まで、月に3万円ほどが加算される。

ところが、65歳からの老齢厚生年金を繰り下げている間に、配偶者が65歳を迎えてしまうと、加給年金は得られなくなる。たとえば、妻が3歳年下の僕の場合、68歳になると妻は65歳だ。

仮に3年繰り下げると、加給年金の受給資格が消えてしまう。だが、この点の説明はまったくなし。正直いって、複雑な年金制度のなかでも、加給年金の仕組みは特に複雑である。日本年金機構のホームページでも説明はしているが、これで本当にわかるのだろうか。

「教科書に書いてあることをすべて信じない。なぜかと疑っていくことが重要」という、ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑先生(京都大学名誉教授)の言葉もある。先の山田さんも、年金事務所の「繰り上げは損」を一概には信じなかったという。