「人生100年時代」のまやかし。年金は繰り上げてこそ価値がある

「損益分岐点16年8か月」に惑わされるな!

「100年時代は繰り下げがお得」への異論

「あんた、年金のことでネットにぐじゃぐじゃ書いているらしいわね。しかも、個人情報までさらして。恥ずかしいからやめてよ」

普段は年金のことにまったく関心のない妻から、僕はある日そう言われた。

10月にマネー現代に書かせていただいた記事「65歳まで年金保険料を払うと「元が取れるのは97歳」の衝撃」は、大きな反響をいただいた。

10月末までにフェイスブックで、いいね!+シェアされた数は4000件以上。それほど記事は読まれているようだ。読者の皆さんがいかに年金問題に関心を寄せているかが伝わってくる。

 

第4次安倍内閣の成立とともに、政府は「全世代型の社会保障」に向かうことを改めて宣言した。目指すのは、70歳まで安心して働ける社会で、企業に対しても今後、70歳までの雇用延長を働きかけていくという。

その際、枕ことばとなっているのが、「人生100年時代」である。一度しかない人生。僕だって100年を生きてみたい。ただし、社会保障が本当に対応していただけるのなら……。

現在の日本の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.26歳(平成29年簡易生命表)。100歳以上の長寿者は、6万9785人(平成30年住民基本台帳)だ。まだまだ「人生100年」は遠く感じるが、20年先の時代ではより近づいてくる。

平成29年4月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口」によれば、22年後の2040年、男性の平均寿命は83.27歳、女性は89.63歳となり、100歳以上人口は30万人(合計特殊出生率1.44の場合)を超えるという。

たしかに、かなりの人が人生100年を生きられそうなイメージになってくる。

だから、100歳以上生きても安心なようにと、原則65歳からの年金についても、繰り下げ受給ががすすめられている。

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メディアでは、「70歳まで繰り下げると、年金が142%も増える」という見出しが躍り、逆に「1年繰り上げると6%の減額」「5年繰り上げると30%も損する」という記事があちこちで目につく。大合唱だ。

「人生100年時代だし、繰り下げで少しでも多くもらおうか……」という人もいらっしゃることだろう。だが、この秋に年金受給者となった山田さん(63歳=仮名)の選択は真逆だった。

9月に退職し年金受給手続きをとった山田さんは、現在63歳。大手家電メーカーともう1社にまる40年勤めた方である。

「私の場合、厚生年金(報酬比例部分)については、1年前に受給年齢に達していたので、老齢基礎年金を繰り上げてもらうことを考えて退職したのです」