地上波とネットテレビの「深刻な断絶」〜歴史を振り返ってみると…

なぜハラスメントが横行するのか
飯田 豊 プロフィール

ネット動画に溢れかえる「テレビ芸」

2018年9月、モデルで女優の本田翼さんがYouTubeにゲーム実況チャンネル「ほんだのばいく」を開設し、わずか20日ほどで登録者が100万人を超えるなど人気が沸騰しています。それに対して、YouTubeで活動してきたゲーム実況者たちは「ほんだのばいくに轢かれた」と言い、複雑な感情を表明しています。

筆者は昨年、『現代メディア・イベント論 ―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』(飯田豊・立石祥子編、勁草書房)という本を手掛けたのですが、このなかでゲーム文化研究者の加藤裕康さんが、ネット動画を代表するゲーム実況について論じています。

ビデオゲームのプレイ画面を、解説や雑談を交えて楽しむゲーム実況は、日本に限らず、世界中で白熱しています。YouTuberのなかで最も登録者数の多いチャンネルを運営するPewDiePieは、スウェーデン出身のゲーム実況者です。

PewDiePieのYouTubeチャンネル

しかしゲーム実況は決して、ネットのなかだけで自生した文化ではありません。日本のゲーム実況は、遅くとも90年代から複数のゲームセンターでおこなわれており、2003年に始まった「ゲームセンターCX」(フジテレビONE)――「めちゃイケ」メンバーだった有野晋哉さんのプレイスタイル――からも多大な影響を受けています。

そういえば、筆者が子どもの頃には、ビデオゲームを主題的に扱う番組は地上波にもありましたが、今ではすっかりなくなってしまいました。テレビに見限られつつあった周縁的な事物が、ネット動画文化の中心に反転したようにみえます。

メディア批評家のマーシャル・マクルーハンは、人間はまったく新しい状況に直面すると、いちばん近い過去の事物や様式にしがみつくものだと言いました。私たちはバックミラー越しに現在を見て、未来に向かって後ろ向きに進んでいるというわけです。

 

マクルーハンが活躍した1960年代、成熟期を迎えていたテレビが、演劇や映画の世界から多くのことを学んでいたように、新しい技術のなかには必ず、ひとつ前のメディアの特性が組み込まれていきます。

ネットのなかには既に「テレビ芸」が溢れかえっています。テレビのタブーをネットに持ち込まなくても、地上波で認められない過激な表現は、無数のYouTuberによってやり尽くされ、しばしば物議を醸してきました。

そうであるならば、キャリアを積んだ芸人さんたちが、ネットテレビで信頼や
共感を拡大していくためには、これまで視聴者からの批判に向き合い、BPOに対して感情的には反発しながらも、どうにか折り合いをつけてきた苦い経験の蓄積こそが、むしろ強みになるのではないかと思うのです。