地上波とネットテレビの「深刻な断絶」〜歴史を振り返ってみると…

なぜハラスメントが横行するのか
飯田 豊 プロフィール

テレビとネットの非対称な相互作用

2009〜10年といえば、Twitterが日本でも本格的に普及し、「ダダ漏れ」といった言葉が流行していた時期です。

2009年にUstreamがTwitterやFacebookと連携できるようになり、にわかに無数の配信者が生まれました。イベント会場からの配信が盛んにおこなわれていた一方、居酒屋で飲みながら喋っている様子を共有する人たちも珍しくありませんでした。

2011年3月の東日本大震災では、ラジオやテレビで放送されている番組が超法規的に生配信(=サイマル配信)され、Ustreamは一躍、時代の寵児になります。

生配信に限らなければ、2005年にYouTube、翌年にはニコニコ動画が登場していました。その一方、2005年に日本テレビがいち早く立ち上げた「第2日本テレビ」を皮切りに、民放各局はネット上に相次いでVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスを展開していました。もっとも、第2日本テレビは2008年に完全無料配信に舵を切ったばかりで、まだまだ試行錯誤が続いていた時期といえます。

〔PHOTO〕iStock

21世紀に入って、テレビ広告費の縮小傾向が続いていましたが、2008年のリーマンショックがそれに追い打ちをかけました。

ジャーナリストの佐々木俊尚さんが『2011年新聞・テレビ消滅』(文春新書)、津田大介さんが『Twitter社会論 ―新たなリアルタイム・ウェブの潮流』(洋泉社新書y)を刊行したのが、いずれも2009年のことです。

ソーシャルメディアと連携したニュース番組や討論番組など、ネットとの双方向性を意識したテレビ番組が盛んに開発されていたのも、ちょうどこの頃のことです。

放送局にとっては当時、インターネットは未開の荒野であって、少しずつ開拓が進められていました。その反面、YouTubeやニコニコ動画のなかで成熟を遂げていた動画文化は、テレビの後裔といっても過言ではないものです。

 

筆者は先日、『現代文化への社会学 ―90年代と「いま」を比較する』(高野光平・加島卓・飯田豊編、北樹出版)という本を研究仲間と一緒につくったのですが、このなかで茨城大学教授の高野光平さんが、テレビとネット動画の関係史について論じています。

たとえば、1990年代のテレビ番組では、画面上の出来事にテロップでツッコミを入れる演出が流行しますが、「進め!電波少年」(1992〜98年、日本テレビ)などと並んで、「めちゃイケ」はその代表格のひとつでした。高野さんによれば、

1990年代のテレビは、ボケていないものにツッコんだり、これは面白い(悲しい、腹立たしい)という状況を意図的につくり出したりしながら、ネタ自体の面白さに依存しない、確実にウケる「保証された笑い」や「保証された感動」を生み出していった。(前掲書、36ページ)

「保証された笑い」はインターネットにも向いていて、1999年に開設された巨大掲示板群2ちゃんねるの「実況板」の書き込みは、まるでツッコミテロップのようであり、いわゆる「ひな壇芸人」のガヤのようでもありました。

この作法はやがてニコニコ動画の弾幕に継承されていきました。無論、テロップを多用するYouTuberの動画術に影響を及ぼしていることも明白です。