テイラーVSカニエ…米中間選挙が史上初「インスタ選挙」になった深層

「トランプ集会」で支持者に聞いてみた
海野 素央 プロフィール

「彼女は愚か者」

“We are Q”と書かれた看板のあるテントで話を聞いた、40代白人女性のベッキーさん。以前筆者も解説した、ネット上で陰謀論を展開する謎の人物「Qアノン」のフォロワーだそうです。彼女もスウィフトさんや、反トランプのセレブリティたちに否定的でした。

「テイラー・スウィフトは愚か者です。彼女はこれでファンを失ったでしょうね。もう彼女の曲は聞きません。トランプ大統領を支持しないハリウッドスターが出ている映画も観ません。私はカニエを支持します」

アリゾナ州メサでの集会(Photo by gettyimages)

プロのポーカープレーヤーだというマイクさん(38歳)は、そもそもテイラー・スウィフトなんて相手にする必要はない、とのことでした。

「彼女のことは、まったく気にしてません。子供ですから」

ヒアリングを通して、トランプ大統領の支持者が、いかに心情的に大統領と同一化しているかを再確認することとなりました。

 

「インスタ選挙」の功罪は

ハリウッドスターやセレブたちの応援は、いまや米国の選挙の「名物」です。たとえば、2012年の大統領選ではロック歌手のブルース・スプリングスティーンさんがバラク・オバマ前大統領を、16年の大統領選では歌手のビヨンセさんやレディ・ガガさんがヒラリー・クリントン元国務長官を支持すると表明しています。

しかし、筆者が研究の一環としてオバマ氏とクリントン氏の選対にボランティア運動員として参加した経験から言うと、選対はスターからの献金は頼りにしていますが、スターの言動が必ずしも投票行動に結びつくわけではない、という見方をしていました。

オバマ陣営では、投票日の1カ月ほど前になると、戸別訪問の際に「コミットメントカード(お約束カード)」を持参して、投票に行くことを有権者に約束してもらい、カードに署名ももらっていました。さらに投票日1週間前には、投票に行くかどうかわからない、いわゆる「気まぐれな有権者」に絞って戸別訪問を行い、投票率を少しでも高めることに時間とエネルギーを費やしていました。

有名人が影響力を発揮するには、やはり有権者と直接会ってもらうことが重要です。前回の大統領選では、人気歌手のケイティ・ペリーさんなどの有名人がクリントン陣営の戸別訪問(大学訪問)に参加しています。仮にスウィフトさんが今回、地元のテネシー州で戸別訪問をしていれば、大きな反響と効果があったでしょう。

テネシー州の州都ナッシュビルにあるヴァンダービルト大学の世論調査(2018年10月6-12日実施)によれば、元テネシー州知事で民主党候補のフィル・ブレザン候補が、共和党候補のブラックバーン下院議員をわずかに1ポイントリードしています。テネシー州の上院選は大接戦です。

もし若者の投票率が上がってブレザン候補が勝利すれば、「スウィフト効果」が出たといえるでしょう。しかし逆に、カントリー・ミュージックの主なファン層であり、熱狂的なトランプ支持者も多い保守派の白人の投票率が上がり、ブラックバーン議員が勝てば、彼女の発言は民主党にとって逆効果だったということになります。

16年の大統領選では、世論に対するフェイスブックや陰謀論の影響が取り沙汰されましたが、今回の中間選挙は「セレブとInstagramの影響」が大きな意味を持つ、初めての国政選挙になるのかもしれません。