発見!人生がうまくいく人は「首尾一貫感覚」がとても高かった

…ところでそれってなんですか?

誰にもストレス・マネジメントが必要な時代

今、さまざまな業界・企業で、長時間労働やハラスメントによる社員の健康被害が問題となっています。一定規模(50人)以上の企業には、社員へのストレスチェックが義務化され、働く人のメンタルヘルスの向上は職場の重要な課題となりつつあります。

それぞれの職場では、部下に過剰なストレスを与えずに、いかに気持ちよく働いてもらうかに腐心している管理職がいる一方で、管理職自身も一般社員と同程度の高いストレスを感じているという調査結果もあり、複雑な状況となっています。

実際、私はこれまでのべ8000人以上にカウンセリングをした経験があり、今も都内の医療施設などでカウンセリングの仕事をしていますが、企業規模や役職に関係なく、職場の人間関係や自分の将来に不安を抱き、ストレスに押しつぶされそうになって相談に来られるクライアントが少なくありません。

その悩みも、会社や仕事のことにとどまらず、家族や介護、病気、借金といった個人的な事情が複合的に絡み合っていることが多いようです。

そんなときに、大きな力になってくれるのが、「首尾一貫感覚(SOC)」と呼ばれるストレス・マネジメントの考え方です。

いきなり「首尾一貫感覚」といわれても、ほとんどの人はピンとこないかもしれません。この「感覚」は、別名「ストレス対処力」とも呼ばれ、文字どおり「ストレス」に対処するためのヒントになる考え方として、心理学や医療社会学の研究者の間ではよく知られているものです。

しかし、今まで日本で大きな話題になったこともなければ、普通の学校で教わることもないため、初めて聞いたという人も多いと思います。

「首尾一貫感覚」という言葉自体、わかりづらくて難解な印象を与えますが、この感覚の高い人は、ちょうどサッカーの監督がフィールド全体を上からの視点で見て、ゲームの状況や今後の展開などを把握しながら指揮をとるように、今自分が置かれている状況や今後の成り行きなどを、人生全体を見通して判断できるようになります。

そのため、さまざまな困難やストレスに直面しても、それに対処していけるようになるのです。

ここでは、最近上梓した拙著『「首尾一貫感覚」で心を強くする』の内容を引きながら、この感覚の基本的な説明と有効性について解説したいと思います。

 

強制収容所を生き抜いた女性に学ぶ

首尾一貫感覚は、もともと1970年代にユダヤ系アメリカ人の医療社会学者であるアーロン・アントノフスキー博士(1923-94)が提唱したものです。

原語は英語で「Sense of Coherence(センス・オブ・コヒーレンス)」といい、文字通りの意味は「自分の生きている世界が首尾一貫しているという感覚を持っていること」となります。「Coherence」には「首尾一貫」のほか「統一性、全体感」という訳もあり、「過去や未来、自分以外の周辺の世界をより広く俯瞰した場合に、全体として整っている状態」を意味します。

さらに言い換えると、首尾一貫感覚が高い人は、自分の人生で起きることについて「腑に落ちる」という感覚を持っているのです。

アントノフスキー博士が首尾一貫感覚を提唱するきっかけとなったのは、イスラエルに住む女性たちの心身の健康状態を調査したことでした。その中には、第2次世界大戦中にユダヤ人強制収容所に入れられた経験を乗り越え、厳しい難民生活を生き抜いた末に、更年期になっても良好な健康状態を維持している女性たちがいました。

彼女たちは、なぜ挫折せずに生き抜くことができたのか――そこに着眼したのがアントノフスキー博士でした。博士は、そうした“健康的で明るい”女性たちに共通する考え方や特性を分析し、それを「首尾一貫感覚」と名づけたのです。

これは、大きく3つの感覚からなっています。

■把握可能感(=「だいたいわかった」という感覚)――自分の置かれている状況や今後の展開を把握できると感じること。

■処理可能感(=「なんとかなる」という感覚)――自分に降りかかるストレスや障害にも対処できると感じること。

■有意味感(=「どんなことにも意味がある」という感覚)――自分の人生や自身に起こることには意味があると感じること。

過酷な収容体験を乗り越えた女性たちが教えてくれるのは、首尾一貫感覚は先天的なものではなく、後天的に高められる感覚だということです。逆に、人が過剰なストレスに苛まれているときは、この3つの感覚が低くなってしまっているケースが多いと考えられます。