新たに厚生労働部長となった小泉進次郎氏も「あり得ない、悪質だ」と中央省庁の障害者雇用水増しを語った Photo by Getty Images

3700人水増しが発覚…理想的な「障害者雇用」とは何か

「商品開発も障害者」のカフェから学ぶ

中央省庁が障害者雇用数水増し

今年度から障害者の法定雇用率が2.2%に引き上げられ、精神障害者の雇用も義務付けられたが、中央省庁では障害者雇用の水増しが明らかになった。

弁護士ら第三者による検証委員会は22日、中央省庁が3700人を不正に障害者として計上していたと結論付けた。自民党の小泉進次郎・厚生労働部会長は「考えられない。役所が法律を守るのは当たり前だ」と批判。

そのような中、障害者が雇用される「特例子会社」は、働きやすい環境があり雇用率にも算入できるため増え続けている。例えば、第一生命の特例子会社は10年以上の実績があり、定年まで勤める障害者もいる。どのような工夫で継続できているのだろうか。カフェ部門の障害ある社員が、商品開発や企画会議に携わる現場を、障害者雇用についての取材を続けるジャーナリストのなかのかおりさんが訪ねた。

 

朝礼の司会も障害のある社員

月曜日の朝9時過ぎ。第一生命(東京都千代田区)の社内にある「dl.cafe」で朝礼が行われていた。集まったのは障害のある社員を中心に10人ほど司会進行も当事者の男性だ。先週金曜日の売り上げを共有して営業目標を確認する。9時半ごろからはミーティング。カフェスペース増設にあたり、「レジの動線が良くないので売り上げを上げるにはどうするか」が議題だ。

店長やサポートの社員は同席しているが、障害ある社員が意見を出し合い、司会と書記を務める。「まずレジの移動日を決めましょう」「この曜日は〇〇さんがお休みだよね」とスケジュール帳を出し、都合の良い日にちを決めた。

レジに置くものも、社員が活発に意見を出し合う。「お客様にセロテープやペンを貸してと言われる」「領収書も必要」。ここで「忘れている、大事なものはない?」との呼びかけに、「救急セット、病院リストがいる!」「洋服のシミ取りも」と声が上がって、書記がボードに書きつつまとめた。司会が「レジ移動をお客様に告知する担当者を決めましょう」とまとめ、「1人では不安だと思うから、〇〇さん、パソコン得意だし一緒にやりませんか」と仲間への気遣いも忘れない。

dl.cafeのミーティング風景。役割分担も明確で、障害者である社員が中心に行う 撮影/なかのかおり

生き生きと活発な現場

新メニューを決めるのも大きなテーマだ。食品のカタログを見て、社員は生き生きとした笑顔に。司会が「自分が食べたいものでなくて、お客様目線でね」と言うと、「カレーもいいよね」「お待たせしないメニューがいい」「デスクワークのお客様が食べやすいものだとトルティーヤとかどうでしょう」「野菜を付けたい」と活発に意見が飛び交った。「コストも考えないと」「冷凍庫の確保や、賞味期限の管理が必要」と冷静な意見も出た。

司会が発言していない社員に話しかけ、「セットで頼めるドリンクがあったら」「そうだね、セットドリンクがサイズアップできるようにしたらお得感があってわかりやすい」と展開した。サンプルをもらって試食することになり、担当者を決めた。

さらに「原価計算をやったことがある人が2人いるので、プラスしてやっていない人にもやってもらいましょう。企画書を作って下さい」「チラシを頼んでおかないと。やってみたい人」と声をかけ、スムーズに決まった。最後は「絶対成功させよう。みんなで協力すればできる」と締め、1時間ほどで会議が終了。意見がよどみなく出て、前に出るタイプでない社員には仲間が声をかける。負担にならないよう配慮しつつ挑戦する流れができていた。

この日以降、担当者が数回のミーティングを行い、新メニューを決めた。10月からボロネーゼとカルボナーラのパスタ、シーフードピラフを販売しているという。