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論文はやっぱり怖くて、むずかしい

あやしい論文はなぜ生まれるのか?
「論文の書き方」の基本がわかる決定版として、2002年以来、学生を中心に多くの支持を集めてきた『大学生のためのレポート・論文術』の最新版が発売された。時代の変化に対応して、文献・資料の集め方を中心に改訂を加えているが、そのなかで注目されるのが、「論文不正の種類」が加わったことだ。頻発する論文不正の背景はどこにあるのか? 『最新版 大学生のためのレポート・論文術』の著者・小笠原喜康氏による刊行記念エッセイ。

二重投稿問題

2014年の小保方氏のSTAP細胞問題から、にわかに論文不正がとりざたされるようになった。それまで研究不正といえば、主に科研費の使い方といった、お金にまつわる不正のことであった。カラ出張だの、預け金だの、といった問題である。

しかし小保方氏の場合は、STAP細胞の実験が再現できないという問題の他に、画像の改ざんなども問題となった。そのうえ、博士論文の一部盗用問題もとりざたされ、結局博士号の取り消しにまでおよんでしまった。

小保方氏の場合は、本人特有のキャラクターとその研究内容、そしてその後の展開から、たしかに衝撃的であった。学位論文の前書き部分など弁解の余地がないようにみえた。しかしこのことは、小保方氏という特異な人格の、一人の研究者だけの問題ですまされることだろうか。

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私の所属する学会では、昨年、二重投稿問題がおこった。二重投稿というと、まったく同じ論文を同時に別々の学会誌に投稿し、かつそれが両方で採用されて発生する問題だ、くらいにしか思っていない人が多いかもしれない。

しかし事態はとても複雑で一筋縄ではいかない。まったく同じではなく、一部が同じでも問われることもある。同じ人が書くのだから、その人の論文のいくつかでは、同じような文章になることは当然ある。ならば、どこまで同じなら問われるのか。それまで書いた論文などをもとに1冊の本にまとめる場合にも、当然かなりの部分が同じ文章になる。だがそれは投稿ではないので、それらが問われることは、もちろんない。

私の学会で問題になった二重投稿は、さらに似たような結論や論旨を分散させている「サラミ出版」的なところもあった。そのため二重投稿が疑われた2本の論文だけでなく、他の「研究ノート」など7本もの出版論文を、細かく半年以上にわたって検討して、不正を判定しなくてはならなかった。

問題となった論文の、論旨、主張、展開方法、言葉遣い、参考文献などなど、その判定には、何人もの研究者があたり、会議や本人とのやりとりなど、膨大な作業を余儀なくされた。

 

気づきにくいステレオタイプ発言

論文不正というと、ひょう窃、改ざん、不正データ処理などのことだけだと思っている人が大半かもしれない。しかしながら、その範囲は意外に広い。

筆者は、それを拙著『最新版 大学生のためのレポート・論文術』で三つにわけてみた。それは、「研究推進上の不正」「論文執筆上の不正」「論文発表上の不正」の三つである。そしてさらに付け加えて、「不正ではないが温床になっている研究姿勢」というものもあげておいた。