1998年、トルコ北西部地震発生に伴い国際緊急援助活動で同国を訪れた船乗り一筋20年の同期が「流通している紙幣に印刷されている0の数が6個あった」と話してくれました。0が6個。日本円で考えれば100万円札があるようなものです。
この年のトルコのインフレ率は約85%。つまり、今、1万トルコリラで売っている物を1年後に買うのには1万8500トルコリラを出す必要があるということです。
物価の上昇は1年だけの現象ではありません。この年の前年は約86%、その前は約80%、さらに前は90%。数年続くだけで物の値段は何倍にも跳ね上がり、トルコリラで持っていた現金や預金、保険などすべてが大幅に価値を失うことになるのです。
日本の一般会計税収は56兆円。それに対して国の支出は96兆円。国の債務がすごいスピードで増えているのに、働く人の人口は減っている状態です。
そんなこともあり、数年前から日本でハイパーインフレが起きるのではないかとささやかれるようになりました。
いったんハイパーインフレが起きれば、人々は目減りする現金を物に交換しようと、商店に殺到します。
物が高くなることがわかっている店側は、抱えている在庫を出し惜しみすることで、さらに高く売ろうと考えます。こうやって売り場の物が少なくなり、物の値段が上がっていくのです。
この悲惨な状態が何年も続いたら、物の値段に0の数が増え続け、トマト1個が5億ドルになるなど、自国の通貨がほとんど意味をなさなくなります。
まさにこれと同じで、ドルやユーロでないと買い物ができない状態になったのが、ジンバブエの経済破たんなのです。
昔から安全資産といわれている「金(きん)」は、いうまでもなく世界中で取引されています。
アメリカの市場で、1オンス(28.34グラム)が1300ドルで取引されていれば、1オンス金貨を持っている人は交換するのに手数料はかかるものの為替に左右されることのない1300ドルの価値のあるものを持っていることになります。
私が初めて「金」を買ったのは、平成20年。恐る恐る金販売業者に電話注文を入れて、銀行振込で料金を支払って、100グラム(1グラム2700円×100グラム)の延べ板を送ってもらったことが始まりです。
次は500グラムの延べ板(1グラム3000円×500グラム)です。
当時の市況は、「金」好きなお国柄であるインドや中国の経済が活況になり「金」需要が増え、価格は右肩上がりでした。
たとえ、急激な下落が起こったとしても、大昔から人類に好まれた普遍的な美しさを持つ「金」ならいつか買値は上がるだろうと思い、現物購入しました。
また、当時、不動産関連のローンが5000万円程あったので、500万円分の「金」を持っていれば、10倍のインフレが起きたとしても、「金」価格が10倍になるので、それでローンを一括返済すれば、借金のない物件を手に入れることができると考えました。
インフレ後に土地や建物の評価が高く再評価されれば、手放す必要もなく、インフレに強い「金」が資産を保全してくれるのです。