70歳すぎての全身麻酔には、こんな注意が必要です

手術は成功、でも目が覚めない 
週刊現代 プロフィール

持病によってさらにリスク

しかし、手術と同じく麻酔も「侵襲的」(身体を傷つける)医療行為であることを事前に理解しているかどうかは、治療に大きく関わってくる。

「麻酔による最も多い死亡原因は、元々あった疾患が麻酔により悪化すること。そのため高齢者はより注意が必要です。たとえば、麻酔を使うと血圧が上下するので、狭心症や喘息など心臓関係の持病があると死亡率は一気に上昇します。

ほかにも脳梗塞や腎臓病、肝機能の低下、糖尿病などの持病がある人は、麻酔により悪化するリスクが高くなります」(前出・筒井氏)

 

思わぬ既往症が、麻酔と関係することもある。

「『淋病』を経験したことを黙っていた60代の患者さんがいました。全身麻酔の場合、尿が出なくなるため尿道からカテーテル(管)を入れることがあります。

ところが、この患者さんは、淋病によって尿道が狭くなっていたのです。急遽、膀胱に穴を開ける手術をすることになり、患者さんに余計な傷を負わせてしまいました」(大学病院の麻酔科医)

70歳を過ぎた高齢者になれば、若い人に比べ麻酔から目覚めにくくなる。

「全身麻酔の場合、呼吸を止めて人工呼吸器で呼吸をさせるため喉に管を入れることになります。加えて術中は血圧が上下するので心臓にも負担がかかる。そのため心肺機能が衰えている高齢者は、麻酔から覚醒するまでの危険性が増します。

元から呼吸状態が良くなくて、痰が絡みやすい方は、術後肺炎を起こしやすいので、事前の検査が重要です」(辻仲病院柏の葉・外科部長の指山浩志氏)

Photo by iStock

さらに麻酔によって、手術後のせん妄(幻覚)や認知症が進むという研究データもある。

「高齢者の場合は、麻酔が深く入りすぎると、術後に意識障害やせん妄などの合併症が出ることがあります。

これらを防ぐために、脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔、末梢神経ブロックなどの『区域麻酔』を併用して全身麻酔の薬の量を下げ、術後回復が早くなるようにしています」(秋田大学医学部附属病院の麻酔科講師・合谷木徹氏)