微生物が10分の1に減って「野菜は健康に悪くなった」かもしれない

痩せて農薬漬けになった農地を治す法

「これは私たちが作った有機農法の土地で栽培したトマト(左)と、化学農法で栽培したトマト(右)を、研究室の棚に1ヵ月放置した比較写真です」

tomato▲有機農法で作ったトマトは化学農法で作ったトマトとまったく違い、1ヵ月間室温で放置しても、そのまま食べられるほどみずみずしい。

私たちの体はすでに「農薬漬け」だ

化学農法のデメリットはそれだけではない。「農薬漬けの野菜を食べ続けることで、人の健康状態に大きな影響を与える」と久保先生は言う。

「農薬をたっぷり使った野菜を食べている人の尿を検査すると、残留農薬が明確に検出されます。

私たちの腸の中には約3万種類、1000兆個もの微生物がいて、消化や免疫機能を助けるなどさまざまな活動を行っていますが、農薬たっぷりの野菜を食べることによって、その腸内環境が悪くなってしまう可能性があるのです。

近年の日本でアレルギーや免疫疾患が増えているのは、化学農法の広がりと密接な関係があるという学者の方も少なくありません」

日本の農地と、私たちの腸内は、微生物でつながっているのだ。

そうした日本の農業の状況を、根本的に科学の力で改善しようと久保先生が取り組む研究が、「微生物の力を用いた土壌改良」だ。

「農業にとってもっとも大切なのは『土づくり』です。微生物がたくさんいる土地は、見るからに黒々として栄養たっぷり、水を含んでしっとりしています。そういう土地には1グラム当たり6億匹もの微生物がいます。

私たちは土地を微生物の量と種類、化学的性質(残留した肥料などの成分)、物理的性質(保水力、通気性等)の19項目で評価し、その状態別に最適な改善策を土地にほどこす方法を開発しました」

▲SOFIXによる土壌の診断表

「土地のお医者さん」となって

久保先生はもともと、微生物を用いて医薬品を作ったり、石油で汚染された土地を石油分解菌によってきれいにしたりする研究を行っていた。その研究で蓄えた知見を、農地の改良に活かし、微生物が元気に育つ土地の「レシピ」を開発したのだ。

いわば『土地のお医者さん』となって、土地の「病状」を診断し、微生物の力を使って治療をするこの方法を、久保先生は『SOFIX』と命名。立命館大学の知的財産として特許をとり、大手商社などと組んで日本全国に広めていこうとしている。

「微生物の力を活用した有機農法は、土地自体の力が強くなるため、害虫にも強くなります。微生物の発酵熱によって、土地の温度が1〜2度高くなることから、化学農法では必要なビニールシートなどが必要なくなるケースもあります。

農家の人たちの収入を圧迫していた、肥料や資材にかかる費用を3割近く減らせると試算しています。SOFIXを導入することで、農家は儲かり、生活者は美味しく健康に良い野菜が食べられるようになる未来を作っていきたいと思っています」

SOFIX▲SOFIX実験圃場でのトマト栽培の様子

久保先生は「地力は国力」と断言する。日本にもともとあった豊かな地力を取り戻す「土地のお医者さん」という役割に興味がある方は、久保先生の研究室の門を叩いてみてはいかがだろうか。

微生物の探求を通じて、社会と人々の健康に役立つ大きなやりがいを感じることだろう。

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