3600万部漫画『キングダム』が「ビジネス書」に生まれ変わった理由

二度、モノを売る思考術
現代ビジネス編集部

共通言語にしたい

売りつくしたと思っていても、実はまだまだ届いていない場所がある。視点を少し変えて、ちょっとした工夫を凝らせば、新しいところへ届けることが出来る――今回のキャンペーンには、モノを売る、サービスを広めるためのヒントが詰まっている。

三浦氏が語る。

「既存の商品やサービスをさらに成長させたいと思ったとき、これまでと同じ市場だけをターゲットとして考えているだけでは、どうしても限界にぶち当たります。

その商品やサービスを本当に必要としている人は他にもいるんじゃないか。そう考えることが、新しいマーケティングのチャンスを作ることにつながる。

炭酸水だって、それまではウィスキーの割ものでしかなかったけれど、砂糖入りの清涼飲料水に代わる爽快な飲み物……という意味を与えることで、一気に市場が拡大した。普段ビジネス書を読んでいる人に漫画を売る方法だって、あるはずなんです。視点を少し変えるだけで全く新しい市場が見えてくる。『キングダム』に描かれる武将たちの鮮やかな戦略のように。

『もうこれは売り切ったな』ではなく、常に『この商品に新しい価値を発見できれば、まだ届けていない別の市場が見つかるはずだ』と考えることがとても重要だと思っています。既存の常識とか偏見をマーケティングの障害と考えるか、補助線と考えるか、ですね」

各駅の広告は、ひとつひとつコマとセリフが違う。そのセリフもオリジナルのものではなく、ビジネスシーンを意識したものとなっている©原泰久/集英社

すでにSNSを中心に「山手線の『キングダム』の広告すごい。立ち止まってしまった」といった声が続々と上がっている。「売上増」につながったかどうかが分かるのははまだ先のことだが、反応は上々のようだ。

「ZOZOの田端信太朗さんやリンク&モチベーションの麻野さんなど、感度の高いビジネスパーソンがしっかりとこの広告に反応してくれている。手ごたえはあります」(三浦)

 

売上とは別の目標があるか? 牧野氏にこう尋ねると、こんな「野心」を明かした。

『キングダム』をビジネスマンの共通言語にしたい、と思っています。

この漫画のファン同士で話をしていると、仕事のことも『キングダム』になぞらえて話をしていることがあるんですよ。『この前、とんでもないレベルのクリエイターに会ったけど、あれはまさに傑物の類だったなあ』とか、『おれは本能型だけど、お前は知略型だもんな』といったように。分かる人同士であれば、いちいち説明しなくても話が通じる。

よりたくさんのビジネスマンがこの漫画を読むようになって、『キングダム』がビジネスシーンの共通言語になったら、働くということがいまよりももっと楽しくなると思うんです」