日経平均株価がバブル崩壊後の最高値を27年ぶりに更新した10月上旬、食品メーカー元幹部A氏(65歳)の顔はほころんでいた。
「1年前から大和証券の『ラップ口座』に500万円を預けているんだけどね。35万円も利益が出ているんだよ。別にそのカネで何をするわけでもないんだけど、やっぱり心にゆとりができるね。
手数料はたしか2~3%だけど、気にしたことはない。だって、こんなにも利益が出ているんだ。証券会社としても、客に損をさせたら、評判が傷つく。儲けさせるために、全力で投資をしてくれているはずだよ」
ラップ口座とは、証券会社や信託銀行などの金融機関が個人と契約し、資産の運用から管理、売買までを総合的に行う金融商品だ。
日本投資顧問業協会が9月に発表したデータでは、今年6月末の時点で、契約件数は75万件に達し、口座残高は8兆2747億円にも上る。
情報サイト「オールアバウト」でマネー記事のガイドを担当する清水京武氏が解説する。
「ラップ口座の中でファンドラップと呼ばれるものは、顧客のニーズに合わせて投資信託を組み合わせ、運用するサービスです。
分散投資によってリスクを抑えるのを最大の売りにしています。1年で倍になることは期待できませんが、逆に半分になってしまうリスクもまずありません。
QUICK資産運用研究所の調査によれば、各社の運用成績は手数料を除いて、過去5年間で30~50%上昇しています。
ここ数年の株式市場の上昇を受けた結果とはいえ、リスクを抑えた運用でこのパフォーマンスならコストに見合った投資とも言えるでしょう」
大手メーカー勤務のB氏(56歳)も余裕たっぷりの表情でこう話す。
「職場に現れる三井住友信託の営業マンに説明を受け、これはいいと、500万円で同行の『ファンドラップ』を始めました。会社員人生の残り時間もあまりないので、一番積極的なプランを採用したところ、大当たり。
これまでのところ年利15%を実現しています。直近で日米の株価が暴落しましたが、利益が吹き飛ぶような損失にはならないと思います。リスク低減もしっかり計算してくれているようです」