知らないと命にかかわる…M9南海トラフ地震のすべて

いま、あなたにできることは何か
週刊現代 プロフィール

横浜が孤立する

津波の想定最大高が比較的低いその他の地域も、安全とは言えない。東京や横浜、大阪、そして名古屋では4m程度の津波が発生すると予測されている。静岡と比較すると、被害は小さく感じられるかもしれないが、川崎氏はこう警告する。

「これらの地域は『海抜0m地帯』の面積が広くなっています。大阪の梅田や東京の江東区などの街が長期間、水没してしまう可能性もある」

東京スカイツリーに臨む、隅田川付近は特に危険だ。同地に多く存在する地下商業施設などに津波が流れこめば、一瞬で浸水する。

地下だけではなく、建物の1階部分も浸水してしまう。高層マンションでは、エレベーターが軒並み故障し、住民が閉じ込められる。

お台場や銀座、浅草などの人気観光地もまた、海抜は0mに近い。多くの人でにぎわう街を、突如4mの津波が襲う―。地震でパニックを起こした人ごみの中、高い建物に逃げ込むことすら叶わずに、そのまま激流に呑み込まれてしまうだろう。

横浜もまた、津波の被害が大きい地域の一つだ。市内に56もの河川が流れる横浜では、津波が川を遡上し、街中で氾濫を引き起こす危険がある。

「横浜には古い橋が多く存在しています。これらの橋が地震や津波による大量の水の逆流に耐えられる保証はありません。交通インフラが麻痺し、多くの人が孤立してしまうでしょう」(災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏)

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人や建物への直接的な被害に加え、もっとも危惧される「二次災害」が、ライフラインの喪失だ。

南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループの想定では、太平洋側の9割の地域で停電、断水が発生し、ガスも使用不可になるという試算結果が出ている。静岡県では340万人、愛知県では490万人が断水を強いられる。

「電気系統が完全に復旧するまでは、被災後1週間程度はかかります。上下水道に至っては復旧にそれ以上の時間を要し、地震から1週間が経過しても、上水道は7割、下水道も4割が使用できないと考えられます」(金沢大学教授で自然災害に詳しい宮島昌克氏)

上下水道は地下に管を通しているため、被害が広範囲になればなるほど、復旧には人員と時間が必要になる。

 

巨大な地震で避難場所が崩壊したり、交通インフラの壊滅で移動ができなかったりすれば、全国で3000万人を超える人々が1週間以上、ライフラインを欠いた状態で、救助を待ちながら生き延びなければならない。

仮に老人ホームでライフラインが復旧しなければ、食べ物もなく、トイレも流せずに、体力のない高齢者たちは徐々に弱っていく。彼ら全員が1週間以上もの間、確実に生き延びることができるとは考えにくい。

一人が体調を崩せば、連鎖的に数十人もの高齢者が重篤な状態に置かれてしまうことすら考えられる。