40年ぶりの相続大改正で「大損する人」たちの、ある意外な共通点

配偶者居住権、生前贈与、特別寄与…
週刊現代 プロフィール

配偶者居住権で「得する人」たち

配偶者居住権が設定されている不動産は、売ろうとしても買い手がつくことはほとんどない。一度設定した居住権は放棄することもできるが、所有権は子どもが持っているため、売却するには子の同意が必要だ。

自分の自由にはならず、たとえ老人ホームに入りたくなっても、居住権に縛られる可能性が出てくるわけだ。

つまり、妻が65歳未満なら、今まで通り所有権を選び、65歳以上なら居住権というのが一つの目安になるだろう。

では、配偶者居住権を選んで最も得するのは誰だろうか?

配偶者居住権を設定して最も得なのは、子どもと同居している70代以上の方でしょう。相続税のことを考えれば、子どもが得る自宅の所有権は小規模宅地特例が適用され、金融資産で受け取るよりも税額が減免される可能性がある。

また子ども夫婦との同居なら、その後の介護も含めて、生活を支えあい、老人ホームに入る選択肢がなくなっても問題が少ないのです」(曽根氏)

じつは、妻と子の仲が悪くなりそうな場合も、配偶者居住権にはメリットがある。相続問題に詳しい法律事務所アルシエンの武内優宏弁護士が言う。

「子どもが親を家から追い出すというのは実はそれほど珍しい話ではありません。嫁・姑問題がこじれて姑が追い出されるという例もたくさんある。そのような事態を防ぐために、居住権を設定しておけば、法的に住み続けることが保障されます

 

さらに、二次相続(妻の死後)を考えると、税額が減るため、配偶者居住権により、子どもも得をするケースもある。

どういうことか。配偶者居住権は、妻が死んでしまえば消滅する。すると、子どもへの二次相続は妻の金融資産のみとなり、相続税が減額される。相続額にもよるが、妻の居住権で、子も得する可能性があるのだ。

〔photo〕iStock

配偶者居住権か、生前贈与か…どちらを選ぶべきか

今回の法改正で、配偶者居住権に並ぶ大きな柱が、生前贈与だ。

これまでは夫が妻に自宅の生前贈与をすると、遺産の先渡しと見なされた。だが改正後は、婚姻期間20年以上である妻への生前贈与は、遺産分割の対象から外れる

前ページの図で、②をもとに見てみよう。前出の伊藤さんが、もう少し若く、60歳だったとしよう。まだ長い余命がある。家をいつでも売れる選択肢を残してあげたいと夫が思うのであれば、生前贈与を選ぶのも手だ。

評価額6000万円の自宅を、伊藤さんに生前贈与して、夫は亡くなった。すると相続時、夫の資産は金融資産4000万円として計算される。

伊藤さんは自宅所有権(6000万円分)と金融資産2000万円を相続して、自宅と生活資金を確保することができる

Photo by iStock

1年後、伊藤さんは一人暮らしにもなれてきたが、広い家に住み続けるには、掃除が思った以上に大変だと感じ始めた。

家のメンテナンスコストを踏まえれば、一度は終の棲家にしようと考えていた夫との自宅を売却し、手頃なマンションに移るほうがお得だと考えるようになった。

「このように残される妻が若いと、年齢とともに状況が変化しやすい。居住権で縛られるよりも、所有権で選択肢を広げておくことも、損しない相続のポイント。生前贈与は所有権を妻に渡せるうえ、生活費も残せる有効な手段です」(曽根氏)

妻が60歳以下なら、所有権を生前贈与というのが、目安といっていいかもしれない。
ただし、配偶者居住権に比べると、二次相続時の税額が上がる場合も多い。さらに、贈与されたのが後妻だと、前妻の子とのトラブルが起こりやすいので要注意だ。

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