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40年ぶりの相続大改正で「大損する人」たちの、ある意外な共通点

配偶者居住権、生前贈与、特別寄与…

誰にでも関わる「相続」の制度が、間もなく大きく変わる。だが、今のうちに手を打てることもある。新制度の隠されたコツを押さえつつ、「争続」を防ぎ、もっとも得する方法を紹介しよう。

40年ぶりの相続大改正で「損する人」が続出する!

40年ぶりに相続の法制度が大きく変わる。今年7月に民法改正がなされ、いよいよ'19年1月から、順次施行されるのだ。

だが、今回の改正には落とし穴がたくさんある。

「改正のポイントは配偶者、特に〝妻〟の保護です。夫の死後、妻は残された自宅に配偶者居住権を設定できますし、義父を介護した嫁にも貢献した分の請求権が認められます。

しかし、いずれもメリット・デメリットはケースバイケースで、対応を誤れば、損する人が続出しそうなのです。どう対応するのが適切なのか、今も専門家のあいだでは議論が絶えません」(夢相続代表・曽根恵子氏)

ではどうすれば、その落とし穴を回避できるのか。逆に、どうすれば得する相続ができるのか。本誌がいちはやくお教えしよう。

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新設「配偶者居住権」で損をするのは意外な人たち

40年ぶりの相続大改正。その最大の目玉は、自宅の配偶者居住権の新設である。

「例えば、夫が亡くなって、妻が自宅を相続した場合、それだけで法定相続分の2分の1を超えてしまい、妻の手元に現金が一切残らないという問題がありました。このような問題を解消するために創設されたのが、配偶者居住権です」(フジ相続税理士法人代表・髙原誠氏)

 

世田谷区に住む伊藤裕子さん(65歳・仮名)は、夫を肺がんで亡くした。資産は評価額6000万円の一戸建ての自宅と、現金が4000万円。別居する長男と長女がいるため、遺産分割の対象となる相続人は計3人となる(下の表を参照)。

伊藤さんは遺産の2分の1(5000万円分)を相続できるが、自宅(6000万円)の所有権を相続してしまえば、それだけで法定相続分を超えるため、子ども2人に対して1000万円の現金を用意しなければならない。あるいは、自宅を売却するハメに陥る(同表の「これまで」)。この状況を解決するのが、配偶者居住権だ。

「配偶者居住権があれば、子が自宅を相続しても、妻は一生、自宅に住み続けられます。居住権の評価額が3000万円なら、残りの法定相続分の2000万円分は、現金を妻の手元に残せる(髙原氏)

この結果、長男・長女には所有権の半分ずつと、それぞれ1000万円の金融資産がわたることになる(同表の①)。

夫からすれば、妻に終の棲家を保証し、現金も残せる。妻への最後の贈り物として、この新制度は非常にいいもののように思える。しかし、安易に居住権に飛びつけば、年齢が若い人ほど損してしまう可能性があると前出の曽根氏は言う。

「法務省の簡易評価法によれば、年齢が若い人ほど居住権は高くなり、年齢が高い人ほど、居住権は安くなります

つまり50歳くらいで未亡人になって、配偶者居住権を設定したところで、手元に残る現金は少なくなり、逆に80歳では多くなる可能性が高い。分岐点はおおむね65歳くらいです。

これより若い人は、余命を考えれば、所有権のほうが、転居や老人ホームへの入居など選択肢が広がることになる」(曽根氏)