岡口基一裁判官、独占インタビュー「言論の自由を封殺した最高裁へ」

そして、驚くべき司法の内情について
岩瀬 達哉 プロフィール

憲法上の問題があった

補足意見が問題にした岡口判事のツイートは、昨年12月、最高裁のウェブサイトに掲載された性犯罪事件の判決文を紹介したもの(ただし個人情報は秘匿されている)。岡口判事は判決文のURLを、ツイッターの画面に添付したうえで、こうつぶやいていた。

〈首を絞められて苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男 そんな男に、無残にも殺されてしまった17歳の女性〉

補足意見の裁判官らは、遺族の方が私のつぶやいた文言に傷ついたとしています。しかし被害者の女性の遺族は、もともと判決文を裁判所が公開したことに抗議していた。判決文を公開したのは、私ではなく最高裁です。

それがいつの間にか、私のツイートの文言で傷ついたに変わり、それに基づいて私の厳重注意処分がなされました。しかしそれが終わると、再び、判決文を裁判所のウェブサイトに載せられたことに傷ついたという主張に戻っている。この事実は、私のブログのコメント欄に遺族の方が自ら投稿しています。

そして毎日新聞の報道によれば、更に考えを変えて、私のおちゃらけたツイッターで紹介されたことで傷ついたと、4回も「傷ついた理由」を変えているんです。これって、どういうことなのでしょうか。

 

また今回は、表現の自由や裁判官の独立などの憲法上の問題があったのですが、それについて最高裁が全く判断しなかった――つまり、「憲法判断」がなかったことも指摘しておく必要があります。

実は、現在、最高裁には憲法学者が一人もいないのです。そのためか、金沢市役所前広場事件という表現の自由が大きな問題になった事件で、最高裁は、憲法判断をしないどころか、判決の理由を明確に論じない、いわゆる「三行半判決」で終わらせました。そういう流れがあるということも押さえておかなければなりません。

自由な議論が抑制されてしまう

岡口判事のツイッターは2008年から始められ、一日20回程度のツイートを行ってきた。フォロワーは常時、約4万人を数えていたが、東京高裁長官が分限裁判を申し立てるや、研究者用に発信している別のブログが一挙に50万アクセスを突破。その途端、理由不明のまま、ツイッターのアカウントは凍結されてしまった。いまは、アクセス不能の状態にある。

私のツイッターアカウントの読者のほとんどは、法曹関係者や法学部の学生など、法律に関係している方々です。

今回、私が処分される原因になった犬の飼い主に関するツイートにしても、犬の所有権がどちらの側にあるかって結構、面白い事件なので、ロースクール生とか法学部の学生に考えてほしくて載せただけ。元の飼い主を非難する考えなど毛頭もない。

確定した裁判例について、個人情報を完全に隠して、いわば「事例」化したものについて、自由に論じるというのは、たとえ、それによって、当該事件の当事者が傷つくことがあっても、それは許されるというのが、これまで長い間続いてきたルールです。日本の法律学を発展させるためには、実際の事件を題材として議論するのが一番だからです。

そして、こういう議論には、専門家である裁判官も当然に関与することができ、これまでも関与してきました。私も今回このルールにしたがっただけです。

ネット社会では、ネット上で、その議論がされるわけで、今回の犬の裁判についても、法律家や学者がネット上で議論をしています。例えば、明治大学の教授は、今回の犬の裁判について、ネット上で評釈しており、その内容は「もとの飼い主」を傷つける内容ですが、これは完全に許されている行為なのです(https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-031491632_tkc.pdf)。