沖縄で猛威をふるう「中国人が攻めてくる」=中国脅威論を検証する

「臓器を抜かれた」「観光客が蜂起」…
安田 浩一 プロフィール

「反米軍基地運動を行う中国人」はいるのか?

「中国が琉球を乗っ取ったら、あなたの娘さんは中国人の慰み者になります。それを考えて記事を書いてください」

作家の百田尚樹氏から名指しでそう言われた経験を持つのは、地元紙「沖縄タイムス」の阿部岳記者だ。昨年10月のことである。地元保守系団体の主催で、百田氏の講演会が名護市でおこなわれた。

日ごろから"基地の押しつけ"に批判的な記事を書いてきた阿部さんは、この日、取材のために講演会場を訪れた。担当者によって案内されたのは最前列、真ん中の席だったという。

百田氏は講演のなかで、「(基地反対運動の現場には)中国や韓国からも来ています。嫌やなー、怖いなー」などと、反対運動参加者の中に外国人がいるのだと指摘。さらに、目の前に座る阿部さんの名前を22回挙げ、沖縄のメディア批判を繰り返した。

 

阿部さんがその時を振り返る。

「批判はいくらされても構いません。ですが、私が違和感を抱えざるを得なかったのは『慰み者』発言の後に、会場から一斉に拍手が沸いたことです。600人収容の会場は満員でした。その場では思わず笑ってしまったけれど、後になって、こうした言葉が賛同を受ける空気感に、ある種の怖さを感じました」

ちなみに基地建設反対運動に中国人が参加している、資金を出しているという話も、一部では強く信じられている。本当のところはどうなのだろうか?

反対運動の現場を取材で日参している阿部さんは明確に否定した。

「少なくとも、私は現場で中国人の姿を一度も見かけたことがありません」

辺野古新基地建設反対運動の現場で座り込みを続ける奏真実さん(53歳)も、呆れた表情で話す。

「どこの国籍の方であろうが、運動の現場にはどんどん来てほしいと思っています。でも、実際は地元の人ばかりですよ。中国人活動家など見かけたことはない。一部では(参加者のうち)在日コリアンが2割以上などというデマも流布されているが、それもまったくのデタラメ。外国人で目立つのは、米国から来た反戦運動家など、欧米圏の人ではないでしょうか」

そもそも、こうしたウワサ話にはエビデンスがない。

たとえば「中国からの工作資金が流れている」とネット上でもウワサされる辺野古基金(辺野古新基地建設反対運動を支援する団体)の事務局では次のように話す。

「工作資金が流れているといったうわさ話は知っています。ごくたまに海外在住の方から寄付の申し出がありますが、マネーロンダリングを防止するため、国境を越えるお金の移動は想像以上に煩雑なんです。それが面倒で、結局、寄付を断念してしまう方もいます。仮に多額の工作資金の申し出があったとして、それをどうやって受け取ったらよいのか想像もつきません」(事務局)

ちなみに同基金がこれまでに受け付けた寄付の総額は約6億7900万円。事務局によればほとんどが個人からの小口寄付で、ネット上で決算報告もおこなわれている。

「たまに同様の問い合わせがありますが、この場合、どう答えたらよいのか私たちもよくわからない。なんとかなりませんかねえ」

担当者は困惑した口調でそう訴えるのであった。