スルガ銀行に地面師…いま、ヤバイ経済事件が次々表ざたになるワケ

『特捜投資家』作者が解説
永瀬 隼介 プロフィール

怪しげなビジネスは雨後のタケノコの如く

本作では濡れ手で粟の大儲けを企む詐欺集団が大きな比重を占めるが、昨今の詐欺商法の実態はどうなっているのか。

情報サイトを主宰するジャーナリストの半田修平氏に訊いてみた。

「相変わらず仮想通貨絡みの儲け話、ビジネスが多いですね。昨年末、億り人、つまり仮想通貨への投資で億単位の利益を出した個人のケースが山ほど紹介されたこともあり、仮想通貨フィーバーは収まらないんですよ。怪しげなビジネスで投資を募る会社は雨後のタケノコのように出ています」

 

半田氏は、ある注目の人物を挙げてくれた。彼の事業は仮想通貨の中核を成すブロックチェーン技術をビジネスに応用したもの、らしい。彼の発言録を読ませてもらった。トークンエコノミーとかマネタイズ、アクティビティ、AIといったそれらしき言葉が羅列されているものの、何回通読しても事業内容はさっぱり判らない。

景気のいいセリフから、相当な自信家であることは判る。ブロックチェーン技術そのものも豊かな可能性に満ちていると言われるが、果たして彼は本物なのか? 半田氏は「いえいえ、かなり、あやしいですね」とばっさり斬って捨てる。

「結局、情弱(情報弱者)の人間がころっと騙されてしまうんです。日々の情報量が圧倒的に少なく、詐欺の手口にも疎いから、このシステムは凄いんじゃないか、儲かるのでは、と思い込んでしまう。しかも、騙そうとする人間は話術も頭の回転も人当たりも抜群。小金持ちの情弱を取り込むくらい、朝飯前です」

拙著『特捜投資家』でも非情極まりない“モンスター”にこんなセリフを吐かせている。

「金持ちから儲けようと考えるな。貧乏人から儲けるほうがずっとラクで効率的、という厳然たる事実を胸に刻め」 

金融の裏表を知り尽くす、その道のプロにも話を訊いてみた。絶対匿名を条件に、取材に応じてくれた経営コンサルタントのT氏である。

「結局、バブルが弾けそうになるとカネが回らなくなり、燻ぶっていた詐欺事件が浮上するんですよ。アベノミクスの限界が露呈し、景気が後退し始めた今もそう。『かぼちゃの馬車』事件なんて、その最たるものでしょう」

不動産会社『スマートデイズ』が運営する女性シェアハウス『かぼちゃの馬車』は、オーナーに家賃を保証する、いわゆるサブリースビジネスだった。しかし、入居率は五割を下回り、家賃保証はご破算。

スマートデイズは約700人の投資家に約800棟、一万室を販売していたが、オーナーの多くは一億を超える銀行ローンを抱えて途方に暮れ、深刻な社会問題となった。そしてオーナー向け融資を一手に引き受け、莫大な利益を上げた金融機関が地銀の雄、『スルガ銀行』である。

「安倍政権の超低金利政策ににっちもさっちもいかなくなり、スルガ銀行は毒饅頭を食ってしまった。ある意味、アベノミクスの犠牲者ですよ」(T氏)

融資の審査を通すべく、通帳の数字改竄まで手を染めた銀行の体質は悪質極まりないが、「低金利下でも高収益を叩き出すスルガ銀行のビジネスモデルを見習え」と絶賛した森信親・前金融庁長官の責任も大きい。しかし、新聞・テレビの追及はほぼゼロ。被害者であるオーナーの間からは「森が詐欺の片棒を担いだ。あいつも詐欺の一味。本物の悪党」と辛らつな声も多々上がっているのに、なぜか? T氏が答える。

「マスコミは森さんの改革方針と、役人らしからぬ率直な物言いを大絶賛した。新聞・テレビ、そろって森さんの応援団です。いまさら掌返しはできないでしょう。金融庁への忖度もあるだろうし」

結局、森氏はひと言の謝罪もないまま退任後、米コロンビア大学の非常勤講師に転身してしまった。世の中、どこかおかしくないか?