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『ガンダム』は台湾では、共産党を倒す「正義のヒーロー」だった

その視点で観るとストーリーが強烈…

悪役は全員「赤」と翻訳

『マジンガーZ』や『宇宙戦艦ヤマト』、そして『機動戦士ガンダム』……。名作と呼ばれる'70年代の日本アニメは、その多くが「正義によって悪が倒される」ストーリーで人気を博した。とくに男性なら、残虐の限りを尽くす悪役に心を痛め、それを正すヒーローの「正義の拳」に憧れた経験が、一度はあるのではないか。

多くの人に愛される勧善懲悪の物語。これが、ある国では、「愛国心を強めるために」利用されていたことは、あまり知られていないだろう。

 

先に挙げた名作たちは、現在までに、世界各国で放送されてきた。そのほとんどは翻訳版であるため、日本版との間に大きな違いはない。だが、'80年代の台湾版は、ほかの国とやや趣向が違った。

前提として、当時の台湾の置かれていた状況を振り返ってみよう。民主化前の台湾は、中華人民共和国との対立が激化し、「国」として一つにまとまる必要があった。そして、そのために、隣国の母体である共産党を徹底的に排除しようとしていた。この目的のために、台湾政府は日本アニメが利用できると考えたのだ。

日本版と異なる点は二つ。「主題歌」と「キャラクターの名前」だ。

まず一つ目、主題歌だ。海外版の日本アニメでは、基本的に、主題歌も翻訳版が流れる。だが、台湾ではまったく別の主題歌が流され、歌詞には「自己犠牲」や「勇猛」という言葉が多く盛り込まれていた。これは、子どもたちに国防意識を植え付ける目的があったとされる。

そして二つ目、キャラクターの名前。なんと、悪役にはことごとく、共産党を表す「赤」という単語が使用されていた。

つまり、あしゅら男爵の凶悪な外見も、デスラー総統の冷徹な言動も、「赤」と連呼されることで、共産党と結び付けられるように操作されていたのである。

実際、台湾の人々は当時、「主人公は共産党と戦っていると思っていた」というから、その効果はあなどれない。日本のヒーローは、海を渡った先で、思わぬ「敵」と戦わされていたのだ。(森)

『週刊現代』2018年11月3日号より