〔PHOTO〕筆者撮影

恐ろしい化け物が泥を塗りつけ…南島の奇祭は日本のハロウィンか?

宮古島の「パーントゥ」を体験して

注目を浴びる仮面・仮装の神々

いまちょうど、東京の渋谷や大阪のミナミといった都市の繁華街では、「ハロウィン」の仮装をした若者たちが練り歩いているころである。

アイルランド(ケルト)の祖霊供養「万霊節(サウィン)」を起源に、ヨーロッパ大陸からアメリカを経て日本に流入したこのイベントは、ここ十年ほどのあいだに日本に定着したといえるだろう。

一方日本の伝統社会にも、仮装した神々や妖怪が現れる奇祭があることが知れわたってきた。秋田県男鹿半島の「ナマハゲ」はもちろん、岩手県大船渡の「スネカ」、能登半島の「アマメハギ」、トカラ列島・悪石島の「ボゼ」などである。

去る10月24日にはユネスコ(国連教育科学文化機関)の補助機関が、8県10件の伝統行事で構成する「来訪神 仮面・仮装の神々」の無形文化遺産登録を勧告したばかりだ。

そのひとつ宮古島の「パーントゥ」は、特異な風貌と、だれかれかまわず泥を塗りつける振る舞いなどから、とくに関心が高まっている。

10月初め、筆者はこの南島の奇祭を初めて体験してきたのだが、2年続けて東京と大阪のハロウィンを考察してきたこともあり、ふたつの“仮面祭”を比較してみたい欲求にかられたのである。

 

宮古島の「パーントゥ」とは何か

宮古島のパーントゥは、仮面をつけた泥まみれの神が、集落の人々に無病息災をもたらすもので、祭自体は「パーントゥ・プナハ」と呼ばれる。

島内の平良地区島尻と上野地区野原に伝承され、私が体験したのは10月8日と9日に島尻で催された祭の方である。

パーントゥは方言で「怪物」「化け物」を意味し、悪霊や災いを祓い、村人に幸せや豊穣をもたらしてくれる来訪神で、ウヤ(親)、ナカ(中)、ツァ(子)の3体からなる。

パーントゥ役の若者は、シイノキカズラという蔓草で作った蓑をまとい、奇怪な仮面をつけて「ンマリガー」と呼ばれる泉に入る。そして、泉の底に溜まった臭い泥を全身に塗ることで、ヒトから神へと変身するのだ。