孫正義も大ヤケドの可能性…カショギ氏殺害にちらつく「影」の正体

インテリジェンス「超応用問題」を解く
佐藤 優 プロフィール

孫正義社長の「賭け」

邦丸: どういう結末を迎えるのか、ちょっとまだ見えませんが、どういうふうに佐藤さんは見ていますか。

佐藤: サウジアラビアは、とりあえず「公権力が殺害に関与した」ということは認めると思うんです。ただし、過失死だと。

邦丸: 今でもそう言っていますね。

佐藤: とりあえず、それで通す。それで動かざる証拠がいろいろ出てきたところで、徐々に真相に近いものを段階的に認めていくと思うんです。

邦丸: ムハンマド皇太子の周辺の人物が事件にかかわっている、と言われている。一国の皇太子です。でも、彼まで行くというのは、まず考えにくいですよね。

佐藤: それは考えにくい。ただしこの先、イランの動きがあるかもしれない。

邦丸: イランですか?

 

佐藤: イランはイスラーム教のシーア派の国で、サウジアラビアと対立していますね。サウジアラビアはスンニ派の国ですが、国民にはけっこうシーア派も多いんですよ。そこを揺さぶって、「王制を倒せ」ということに発展してくる可能性はあります。

邦丸: ちょっと待ってください。CIAが絡み、一方でイランが絡み……。

佐藤: それでサウジアラビアの根幹が揺らぐということになると、国際社会は大混乱です。日本も、エネルギー政策の根本を見直さなければならなくなる。

邦丸: ちょうど、今日(10月19日)の東京新聞の1面に「サウジ投資ショック」という記事が出ています。ソフトバンクがサウジアラビアと共同設立した11兆円のファンドがあります。あまりにも多額ですね。

佐藤: でも逆に、ここでトランプ大統領やムハンマド皇太子が持ちこたえれば、こんな非常時にもサウジアラビアからおカネを引かなかった外国企業というのは、ものすごく優遇されますよ。巨万の富を得ることができる。

だから、かなりギャンブルに近くなっていますよね。丁でいくか半でいくか、張らなければいけない。たいへんな利権構造になってきます。

邦丸: すごいですね。

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佐藤: だから今回の事件は、インテリジェンスの視点からいえば「超・応用問題」なのでおもしろいんです……おもしろいなんて言うと不謹慎なんですけど。それにしても、公館内で殺人が行われるなどということは、たぶん外交の歴史に残る大変な事件ですよ。

邦丸: トルコからすると、とんでもない事件ですよね。

佐藤: 要するに「舐めてんのか?」という話ですからね。同じことがアメリカやロシアでできるのか。もしアメリカやロシアにある領事館で他国がそんなことをした場合、彼らはどんな法令を適用してでもふんづかまえますよ。ロシアなんて、そういったことになると国際報道なんて無視しますから。

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol.143(2018年10月24日配信)より