孫正義も大ヤケドの可能性…カショギ氏殺害にちらつく「影」の正体

インテリジェンス「超応用問題」を解く
佐藤 優 プロフィール

ちらつくCIAの影

佐藤: そして今、トルコ政府が表に出てきているわけですが、ものすごく不思議に思います。

邦丸: どうしてですか?

佐藤: アメリカがただならぬ関心を示しているから。アメリカではトランプ大統領と情報機関が、ものすごい緊張関係にあるでしょう。

邦丸: 特にトランプ大統領とCIAですね。

佐藤: ロシアゲートの話もある。トランプさんは、サウジアラビアとのビジネスの関係が深いんですよ。「サウジアラビアに武器を売り込むことによって、アメリカ経済が活性化される」というのは、トランプ政権が掲げる政策の根本の根本なんです。だから極力、コトを荒立てたくない。

しかしアメリカの情報機関は、どんどんコトを荒立てようとしていて、情報をトルコ、あるいはマスコミに流しているんじゃないか。さすがにトランプ大統領といえども、サウジアラビアに圧力を加えざるを得なくなる。大変なマイナスです。こういう構図ではないか、と私は見ているんです。

邦丸:アメリカでは、まもなく中間選挙もありますよね。共和党が敗けるんじゃないか、と言われているけれど、もっと打撃を与えようと。そういう見方もあるんですね。

 

佐藤: これは仮説ですが、たとえばトランプ大統領はかなり早い段階で殺しを知っていたけれど、隠蔽しようとしたのだとしたら、普遍的な価値観として人権を重視するアメリカの世論はどう反応しますか。

「大統領が自分の利益のために殺人を隠蔽したなんて、とんでもない」という話になる。だから、この事件はアメリカの内政、特にCIA対トランプというところに発展しかねない、ものすごく面倒くさくて複雑な問題になってきていますね。

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邦丸: 今回、トルコのエルドアン大統領は、サウジアラビアに対してもアメリカに対してもハッキリした物言いをしていません。

佐藤: はい。これもいろんなことを考えているんだと思うんですけれど。

邦丸: バランスを見ているわけですか。

佐藤: ええ。それと、人権無視だとか暗殺だとか、そういったことを声高に言うと、今度は「じゃあ、あなたの国は大丈夫なのか」と言われかねない。

邦丸: トルコだってやっているじゃないか、と。

佐藤: そう言われるとエルドアン大統領としては、あまり調子がよくないわけですよ。ですから、非常に複雑なゲームなんですね。