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「国民のDNAデータ」を国家が掌握!そんな監視社会は幸せか

迷宮入り事件の解決には効果抜群だが…

米国の犯罪捜査に、(犯罪とは無関係の)一般人のDNAデータが頻繁に使われるようになってきた。

まず今年4月、カリフォルニア州で40年以上も未解決だった性犯罪事件が解決された。その決め手となったのは、最近ブームの遺伝子検査サービスから(間接的に)得られた一般人のDNAデータベース。州警察がこれを捜査に導入すると、それから僅か4ヵ月後に容疑者が逮捕され、全米の注目を浴びた。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55605

これを契機に、その後、半年余りの間に同じ捜査手法で、迷宮入りとなっていた殺人・性的暴行事件が15件も速やかに解決された。この調子で行けば、いずれ米国では重犯罪の捜査に、一般人から集められた大量のDNAデータが使われるのは日常茶飯事となりそうだ。警察側から見れば、新たな捜査手法として確立されつつあると言って間違いなかろう。

しかしそこには、DNAという究極の個人情報を掌握した国家が、それを使って国民の日常生活に目を光らせるなど、ディストピア的な監視社会の到来も懸念されている。

 

遺伝子検査サービスとは何か

この背景にあるのは、最近、急速に市場を拡大している「遺伝子検査サービス」だ(図1)。これは以前から大学の研究者らが実施してきた専門的な検査のことではなく、最近、民間の業者が一般消費者向けに数百ドルの料金で提供する遺伝子(DNA)検査のことだ。

図1)米国の遺伝子検査サービス各社のユーザー数推移 
出典:http://thednageek.com/dna-tests/

米国では2006年に設立された「23andMe」などが、その先駆けとされ、以降、次々と同様のサービスを手掛ける業者が現れた。そこでは、まず遺伝子検査を手掛ける業者から郵送されてきた検査キットの容器に、ユーザーが自らの唾を吐き入れて返送する。

この「唾」(に含まれているDNA)を、業者が「DNAマイクロアレイ」と呼ばれる専用装置やコンピュータを使って解析する。これによりユーザーが特定の遺伝性疾患にかかる確率など「健康情報」が算出される。さらに、このユーザーの「親族関係」や「先祖情報」など家系図情報も(ある程度まで)明らかにされる。

これらの検査結果(各種情報)を、23andMeなど業者は自社サイトにアップする。ユーザーは自分専用のキーワードを使って、このサイト上にアップされた自らの健康・家系図情報などにアクセスすることができる。

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日本でも同様の遺伝子検査サービスが、「ジーンクエスト」や「DeNAライフサイエンス」など幾つかの業者から提供されている。ここで日米の大きな違いは、日本のユーザーは遺伝子検査から主に「ガンや成人病へのかかり易さ」など健康情報を得ようとしているのに対し、米国のユーザーは自らの家系図情報、特に「先祖情報」に最大の関心を抱いていることだ。

実際、図1に示された業者名(MyHeritageやFamily Tree DNA、あるいはAncestryDNAなど)からも分かるように、米国の業者の多くはユーザーの家系図や先祖情報を提供している。その利用者総数は今や1700万人に達するなど、米国人の「約20人に1人」が、(専ら)「自らのルーツ」を探すために遺伝子検査サービスを利用していることになる。

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