2022年、我々はどんな自由と幸福を手にしているか

田中道昭×藤井太洋

気鋭のSF作家・藤井太洋が、近未来小説『ハロー・ワールド』を出版した。ストーリーの面白さはさることながら、アマゾン、グーグル、ビットコイン、完全自動運転など、最新のITテックがすんなりとよくわかる、と好評だ。

田中道昭氏は、『アマゾンが描く2022年の世界』でアマゾンが仕切る近未来を描き、衝撃をもたらした。

東京オリンピックを挟み、激変するこれからの4年について、お二人に語ってもらった。

電子書籍がデビュー作の異色作家

田中 『ハロー・ワールド』、最新のテクノロジーが満載で、また、かなりディテールにこだわってリアルに書いていらして、映画を見ているようでした。

藤井 もともと紙の本ではなく電子書籍デビューだったので、自分の知人や友人のエンジニアたちに、小説書いたから読んで、と広めてきた経緯があるんです。あんまり手続きを短縮したり、想像でえいやっと書いたりすると、なんかここおかしくないか、といった突っ込みが入るので(笑)。

田中 なるほど。相当マニアックな読者がいるんですね。

藤井 そうです。IT系のマニアックな読者がはじめからついていたので。

田中 今回の作品にも、冒頭からプログラミング言語のようなものが登場しますね。ITまわりの勉強にもなります。

 

藤井 これを読んで、開発に入ってみようかなとか、海外に出てみようかなと考えるとっかかりになってくれれば嬉しいですね。

田中 お互いの仕事は全然違いますが、目的意識、問題意識が僕と似通っていると思いました。日本は今、テクノロジーの急激な変化に出遅れている現状ですから、本を書いたりオンラインで配信するときには、危機感や問題意識を高めたいと考えている一方で、同時になんとか「日本の活路」を示したい、と考えています。この『アマゾンが描く2022年の世界』でも、最終章に読み手をインスパイアしたい気持ちを盛り込みまして、そのあたりに同じものを感じました。

これだけテクノロジーの進化が激しいなかで、たとえば自動車の業界を理解するのにも、IT、電機、通信、エネルギー、さまざまなものがフュージョンしていますから、それぞれのことを深く、同時に知らないと読み解けない時代がきているんですね。そしてどんどん過去のものになっていく。そのあたりにも共通点を感じました。

藤井 『ハロー・ワールド』におさめた5つの短篇は、基本的に自分自身が体験してきたことを、設定を未来に変更して小説にしたものなんです。たとえば一話目は、アプリを作っていて、利用者がいけないことをしているのを見つけたことが素材になっています。

藤井太洋氏

田中 その話はじっさいにあったことなんですか。

藤井 はい。国はインドネシアではなく、アラブの春のテヘランですけれど。

田中 国名も実際の企業名もそのまま出てくるので、そのあたりもリアリティがありますね。

藤井 そうですね。日本の小説だと普通はぼかしたりするんですが、グーグルを想定した会社、アップルを想定した会社、アマゾンを想定した会社、と名前をつけていくと何がなんだかわからなくなってしまいますし、リアリティがどこにもなくなってしまうので、いっそのこと全部、実名にしました。

田中 ご存じのようにNETFLIXなどの動画配信の世界でも、コマーシャルの代わりに、作品のなかにそのスポンサーの商品を登場させるやり方が増えていますから、やはりリアルなものを登場させないと、読み手側もリアリティを感じなくなっていますよね。

藤井 倫理的に許されない、たとえば人体実験する会社などといった場合には、やはり実名は出せないと思いますが、幸いこの『ハロー・ワールド』ではそういうことをせずに、全部、実名で通すことができました。最後の最後にブロックチェーンについて書けて、本当によかった。