アイオワ州は米中貿易戦争の間接的な主戦場になっている〔PHOTO〕gettyimages

米中間選挙、中国の報復関税にあえぐ農業州はトランプを見放すか?

貿易戦争の主戦場で起きていること

中国の報復関税にあえぐ農業州の動向

上・下2回にわたって中間選挙でトランプが投げ込む貿易の変化球について考えている(前回はこちら https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58102)。2回目は共和党側だ。

一連のトランプ関税に対し、「自由貿易の党」共和党の内部はどうか。

中国が報復として米国産大豆に関税を課し、大豆価格が下落する中、大豆産地のアイオワ州は米中貿易戦争の間接的な主戦場になっている。

現時点では、共和党内には「短期の痛みに耐え、長期の利益を得る」というトランプの貿易政策に表立った反発は少ない。農業州の共和党候補も貿易争点については黙して語らない。

アイオワ州の保守派会合でも、共和党の州知事、連邦議員、地方議員らは登壇しても、誰ひとりとして関税について語らなかった。共和党下院候補の支持者向け会合では、プレス非公開であっても、ラストベルトなど労働者を多く抱える地域以外では、貿易については避けたがる。

共和党の有権者、とりわけ農家に「痛み」が生じるトランプの貿易政策をさすがに褒めるわけにはいかないが、批判もできないからだ。

経済利益よりも信仰?

現地の共和党幹部らの説明を総合すると、4つの理由がある。

1つ目は、宗教・社会争点だ。アメリカの有権者は、経済利益と社会要因が天秤にかかると後者を選ぶ。中絶の非合法化を悲願とするキリスト教保守は、最高裁の保守化を熱望している。

多くの有権者はクリスチャンであり農家だ。カバノー最高裁判事就任は、福音派の農家に関税による不利益感を棚上げさせる力はある(参照:「なぜトランプをキリスト教保守は支持するのか?」https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58025)。

2つ目は、共和党の公職者や候補者が、純粋に「トランプに逆らえない」という事情だ。大統領の政策について少しでも異論を唱えれば、大統領に反撃される。そのことでトランプ支持者からの評価も下がる。

トランプ大統領は、内政、外交について閣僚や補佐官にあれこれ指南される中、経営者としては経験せずにすんでいた不愉快な経験をしている。そのビジネスマンの大統領が、周囲に「これは自分の得意分野だ」と自負し、自尊心を回復できる数少ない分野が貿易だ。

つまり、貿易で大統領に異議申し立てするのは、他の分野での進言とは意味が違う。誰もそのリスクをとらない。トランプを共和党内で批判するのは、失うものが無い引退を決めている政治家だけだ。

3つ目は、タイミングである。今年度の収穫の季節のうちに中間選挙が終わる。中間選挙が来年だったら、農家の感情も違っていたかもしれない。ただ、地域や産品により事情が異なるため、急速に不満が広がる可能性もある。

 

中国の選挙介入騒動?

4つ目は、トランプ政権の厳しい対中姿勢だ。アイオワ州の共和党幹部は、「中国側に問題の原因がある」と農家に吹き込んでいるとして次のように述べる。

「為替、中国での米企業の不利益、知的所有権の3つが重要だ。自由貿易は大切だが、それはフェアである限りにおいてだ。中国とは貿易戦争をしているのではない。フェアな貿易をしてもらう説得だ」

一方の中国はトランプの膝元を揺るがそうと、「大豆州」に揺さぶりをかけた。

9月23日付のアイオワ州地元紙「デモイン・レジスター」に、トランプの貿易戦争がアメリカの農家のためにならないという「記事」を差し込んだのだ。